在職中の転職準備は、最初の3手が決まれば動き出せます
期末の面談で「来期も同じ役割でお願いします」と言われて、その帰り道にスマホで検索した。そういう入り方をした人に向けて書いています。
結論を先に書きます。在職中にやる準備は、(1)職務経歴を1枚のメモにする (2)求人を見るだけ見る (3)相談先を1つ決める、この3手で足ります。辞めるかどうかは、3手を終えたあとで決めて間に合います。読み終わったときに、今夜どれから手をつけるかが決まっている状態を目指します。
そもそも「準備」って、具体的に何をすることなのか
転職の準備というと、面接の練習や自己分析シートのようなものを想像しがちです。でも在職中に最初にやることは、もっと事務的です。ひとことで言うと、「自分が何をやってきたか」と「外にどんな仕事があるか」を、同じ机の上に並べる作業です。
並べるだけで、たいていの人はいったん落ち着きます。辞めたい気持ちの半分くらいは「外が見えていない不安」でできているからです。外が見えると、辞める理由も、辞めない理由も、どちらも言葉になります。
お金の話も先に片づけておきます。求人を見るためのサービス登録は、名前と連絡先と職歴の概要を入力して、求人が見られるようにする作業です。この段階で費用がかからない形のものが多いのですが、料金の考え方も、入力を求められる情報の範囲も、サービスごとに違います。入力を始める前に、そのサービスの公式ページの記載を見てください(2026-08-04時点。最新は公式でご確認ください)。
そして、ここが在職中の一番いいところなのですが、準備の段階では何も失われません。 会社を辞める必要も、上司に言う必要も、応募する必要もない。嫌になったら、メモを閉じて元の生活に戻れます。戻れるものは、とりあえずやってみていい。私はだいたいこの基準で物事を決めています。
最初の3手(このまま順番にやれば終わります)
手1|職務経歴を1枚のメモにする(20分)
私用のメールアドレスで新しいメモかドキュメントを1つ作り、次の4つを箇条書きにします。
- 会社名(社名は自分用のメモなのでそのままで構いません)と、在籍していた期間
- 担当した仕事を、動詞で書く(「見積書を作った」「新規の問い合わせに一次対応した」)
- その仕事の規模を、数字で書く(担当件数、扱った金額、関わった人数のうち、思い出せるものだけ)
- ほめられたこと、頼まれごとが増えたきっかけ
3の数字が出てこないときは、無理に埋めなくて大丈夫です。あとから給与明細や社内の資料を見れば思い出せます。ここで完璧を目指すと、たいてい30分で嫌になって止まります。この段階の目的は、書類を完成させることではなく「材料が手元にある状態」を作ることです。
書き出したメモを、応募に使う体裁に整える段になったら、書き方の型が要ります。初めての職務経歴書を1枚に書き出す手順を別の記事にまとめてあるので、手1が終わったあとに読んでください。
手2|求人を「見るだけ」見る(30分)
応募しません。見るだけです。見るときの条件は3つに絞ります。
- いまの職種と同じ仕事(=自分の相場を知るため)
- いまの職種と隣の仕事(=経験が横に効く範囲を知るため)
- 通勤できる範囲、または在宅で成立する仕事(=生活の制約を先に入れるため)
この3つで20〜30件も眺めると、「求められている経験の書かれ方」に共通の型があるのが見えてきます。手1で作ったメモと照らして、共通して出てくる言葉が自分のメモに入っていなければ、それが書き足すべき項目です。
ここまでは、誰がやっても同じ手順です。あとは「自分の職種の求人が、実際にどれくらい、どんな条件で出ているか」という個別の話だけが残ります。求人の探し方と、在職中でも見続けられる形の作り方を1ページにまとめてあるので、在職中でも続けやすい求人の探し方を見ておくと、手2はそのまま終わります。
手3|相談先を1つ決める(10分)
ここでいう相談先は、家族や同僚ではありません。求人を持っていて、日程調整を代わりにやってくれる相手のことです。在職中の転職活動でいちばん詰まるのは、書類でも面接でもなく「平日の日中に面接の時間を作れない」という一点だからです。
1つでいいので登録して、最初の面談だけ受けておく。合わなければ使わなければいいだけです。複数を同時に走らせると連絡の管理が破綻するので、はじめは1つに絞ります。
なお、20代のうちに1回目の転職をする人は、社会人経験の短さを前提に組まれた進め方のほうが話が早いです。30代以上の人は、ここは今回は見送っても損はしません。当てはまる人だけ、20代の人向けに絞った進め方を確かめるようにしてください。
用意するものと、先に確認しておく条件
在職中に動き出すために要るものは、そんなに多くありません。
- 私用のメールアドレス(会社の端末・会社のアドレスは使わない)
- 職務経歴書。ハローワークインターネットサービスの「履歴書・職務経歴書の書き方」ページで、職務経歴書のテンプレート(簡易版・詳細版・表形式)と作り方のパンフレットが公開されています(2026-08-04時点で確認。内容は更新されることがあるので、最新は公式ページでご確認ください)
- 就業規則。副業の可否と、退職を申し出る時期の定めがどう書かれているかを、動き出す前に一度読んでおきます
- 面接に着ていける服。新調しなくて構いません
それと、期間の話をひとつ。期間の定めのない雇用については、民法第627条第1項に「解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」という定めがあります(2026-08-04時点。条文はe-Gov法令検索で読めます)。一方で、就業規則には「1か月前まで」などと書かれていることが多く、実際の進め方は勤務先の規定や引き継ぎの事情によって変わります。ここは自分のケースの話になるので、勤務先の就業規則と、判断に迷うなら各都道府県労働局の総合労働相談コーナーのような公的な窓口で確認してください。
在職中に多い心配ごとは、だいたいこの2つです
「会社に伝わったら気まずい」
在職中の転職活動そのものは、法律で禁じられているものではありません。ただ、伝わるときは、たいてい本人の行動ではなく痕跡から伝わります。会社の端末に残る閲覧履歴、社用アドレスに届く求人メール、急に増えた午後半休、そして自分から漏らした一言です。
逆に言えば、痕跡の出どころは数えられるくらいしかありません。潰す順番も決まっています。在職中の転職活動で気をつける痕跡を知ると、この心配はだいたい小さくなります。
「いま動くべきなのか分からない」
時期の話は、気持ちではなく事実だけで決めたほうが早いです。事実として存在するのは、賞与の支給日と査定の対象期間、就業規則に書かれた退職申出の時期、そして内定から入社までにかかる期間。この3つが手元にあれば、逆算で「いつ動き出すか」が出ます。
急ぐ必要はありません。順番の問題です。ボーナスと退職時期の順番を整理しておくと、いま動くか、あと3か月待つかを、自分の数字で決められます。
この進め方が向かない人
正直に書いておきます。次のような場合は、この3手より先にやることがあります。
- 心身の調子が落ちている。休むことのほうが先です。求人を見るのは元気が戻ってからでも遅くありません
- ハラスメントや未払いなど、いま起きている問題を解決したい。転職は問題の解決ではなく場所の変更です。まず労働局や労働基準監督署のような公的な窓口へ
- いまの会社でやりたいことが残っている。この場合、外を見ると「やっぱりここでいい」と分かるだけで、それは十分な収穫です
- 3か月以内に転職を終えたい。在職中は日程調整に時間がかかるので、期限が固いなら別の組み立てが要ります
つまずきやすいところ(私が実際にやらかした順に書きます)
先に失敗のほうから書きます。私は転職活動を5回やって、6社を渡り歩きました。そのうち何回かは、準備をすっ飛ばして「とにかく今の会社を出る」から始めています。結果どうなったかというと、面接で自分の仕事の話がうまく話せませんでした。 やってきたことを言葉にしていないので、志望動機だけが立派で、中身が薄い。相手にはすぐ分かります。
つまずきやすい点を3つ挙げます。
- 職務経歴のメモを作らずに応募してしまう。 書類が通らない理由が分からないまま数が減っていきます。手1に戻ってください
- 同時に何社も進めて、連絡を取りこぼす。 在職中は返信できる時間が限られます。3社くらいまでに抑えるほうが結果的に早いです
- 退職を切り出す場面を、何も決めずに迎える。 ここは事前に言い方を決めておくかどうかで、かかる時間がまるで変わります。引き止められたときの伝え方を先に決めるのは、内定が出てからでは遅いです
……と、ここまで転職の手順を書いておいて何ですが、外に出る方法は転職だけではありません。私が人材紹介の仕事をしていて一番強く思ったのは、会社の中にいるだけでは、自分の値段が一生わからないということでした。値段は、会社が決めているのではなく「その場所の相場」が決めています。だからスキルを上げる前に、まず場所を変えるほうが効くことがある。
その練習として、会社の外で自分の仕事に値段をつけてみる、という手もあります。先に小さく試しておくと、転職の面接で「自分は何にいくらの価値があるか」を自分の言葉で言えるようになります。順番としては転職活動と並行でも構わないので、会社の外で小さく稼ぐ入口を確かめておくと、選択肢が1本増えます。
この記事を書いている人
しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。
人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。零細もブラックも大手も、グローバルメーカーもいます。送り出す側と、動く側の両方を見てきた立場から書いています。
私はキャリアの資格を持っているわけではないので、ここに書いたのは制度の解説ではなく、実際に動いた人間の順番の話です。制度や条件の最新は、勤務先の就業規則と公的機関の公式情報でご確認ください。
お金の入口をまとめたページも用意しています。転職以外の選択肢も含めて眺めたいときは、お金まわりの入口をまとめて見渡すところから始めてみてください。
