申込画面の「源泉徴収あり/なし」で、決めきれなかった人へ
証券口座の申し込みで、特定口座の「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」のどちらかを選ばされる。説明を読んでも、自分がどちらなのか決まらない。そこで手が止まった人向けに書きます。
先に結論です。この選択は「確定申告を自分でやるかどうか」の選択であって、払う税率が変わるものではありません。そして、あとから軽く戻せる選択でもありません。決め方の材料になる事実を、国税庁の説明にそって並べます(2026-08-04に確認。税制は改正されることがあるので、最新は公式でご確認ください)。
まず、口座は3種類しかありません
国税庁の説明を整理すると、こうなります。
- 特定口座(源泉徴収なし)。証券会社が損益を計算し、「特定口座年間取引報告書」を交付してくれる口座です。これを使って簡便に確定申告ができます。納税は自分で行います。
- 特定口座(源泉徴収あり)。口座内で生じる所得に対して源泉徴収されることを選ぶ口座です。その口座での売却による所得は、申告しないという選択ができます。
- 一般口座。損益の計算も自分で行う口座です。
もう1つ、前提として押さえておくと後が楽な事実があります。特定口座は1つの金融商品取引業者につき1口座と決まっています。つまり「A社で源泉徴収あり、B社で源泉徴収なし」という持ち方は成り立ちます。
「源泉徴収あり」を選ぶと、何が起きるのか
ここからは淡々と書きます。
売却するたびに、譲渡益に相当する金額に対して15.315%(所得税および復興特別所得税)の税率で源泉徴収され、これに加えて住民税5%がかかる、というのが国税庁の説明です。証券会社が計算して納めるので、こちらの作業はありません。
配当のほうも受け入れられます。その口座で上場株式等の配当等を受け取る選択をしていると、口座内で生じた譲渡損失があるときは、配当等の総額から譲渡損失を差し引いた金額をもとに源泉徴収税額が計算されます。確定申告をしないまま、損と配当を相殺できるのがこの口座の特徴です。
選ぶ手続きにも決まりがあります。源泉徴収を選ぶには「特定口座源泉徴収選択届出書」を、その年の最初の売却のときまでに提出する必要があります。そして選択は年単位なので、年の途中で源泉徴収を行わないように変更することはできません。申込画面で軽く選ぶ割に、あとで戻しにくい項目なのはここです。
「源泉徴収なし」を選ぶと、何が起きるのか
損益の計算は証券会社がしてくれます。年が明けると「特定口座年間取引報告書」が交付されるので、それを使って確定申告します。納税は自分で行います。
ここで効いてくるのが、給与所得者の申告要否の線引きです。国税庁の説明では、給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象で、給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要とされています(給与の年間収入金額が2,000万円を超える人などは別途対象です)。
そして同じページには、この「合計額」に含まれないものとして「特定口座の源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡による所得で、確定申告をしないことを選択したもの」が挙げられています。源泉徴収ありで申告不要を選べば、そもそもこの判定の外に出る、という関係です。
逆に言うと、源泉徴収なしを選んでいて、その年の利益が小さい場合には、この20万円の線が意味を持ってきます。ただしこれは所得税の話です。住民税の取扱いは別の制度なので、お住まいの市区町村にご確認ください。ここを混ぜて説明している解説が多いので、線を引いておきます。
選ぶときに効く、4つの事実
どちらが有利かは人によって違うので、判断の材料になる事実だけを置きます。
- 申告する/しないは、口座ごとに選べます。1回の売却ごと、1回の配当ごとに選ぶことはできません。
- 他の口座の損益と相殺したいなら、確定申告が要ります。源泉徴収ありの口座であっても、他の口座の譲渡損益と通算する場合や、譲渡損失の繰越控除の特例を受ける場合は、確定申告をする必要があると国税庁が明記しています。
- 源泉徴収ありの口座の損益や配当を申告に含めると、保険料に影響することがあります。国税庁の確定申告書等作成コーナーには、その申告書を提出する場合、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、介護保険料などの額に影響を及ぼすことがある、と書かれています。詳しくは市区町村へ、とも書かれています。税金だけを見て決めると、ここで想定外が出ます。
- いったん申告したら、あとから引っ込められません。源泉徴収ありの口座の譲渡所得や配当所得を申告したあとに、それを申告しないことにする変更はできません。含めないで申告したあとに、あとから含める変更もできません。
迷ったときに、どこで線を引くか
私が事実の並べ方として整理するなら、こうです。
- 確定申告を自分でやる予定がなく、口座を1つしか持たないつもりなら、源泉徴収ありは手間が少ない側です。
- 複数の口座で損益を通算する予定がある、または損失の繰越控除を使う予定があるなら、どちらを選んでも結局は確定申告をすることになります。
- その年の利益が小さくなりそうで、所得税の申告要否の線を意識したい場合は、源泉徴収なしのほうが選択の幅が残ります。ただし住民税と保険料の扱いは別に確認が要ります。
……と書いておいて何ですが、初めての1年は、そもそも利益がどれくらい出るか分かりません。分からないものを前提に最適解を出そうとすると、いつまでも決まらない。ここは「あとで確定申告をする気があるか」で切ってしまって構わない、というのが私の考え方です。制度上の有利不利ではなく、続けられるかどうかの話です。
それと、当たり前のことを書いておきます。この選択は税金の受け取り方の話であって、投資した金額が減らないことを意味しません。元本は保証されていません。
私の場合はこうでした
私は1974年生まれの団塊ジュニアで、人材紹介会社の社長をやりながら、自分でも転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。投資では、25歳から40歳ごろまで株や信用取引、CFD、FX、日経225先物ミニで短期売買をして、大きく負けています。FXでは最大15〜16倍のレバレッジをかけていました。
当時いちばん軽く扱っていたのが、この口座の種類の選択でした。売買の判断には何時間もかけるのに、税金の受け取り方は「たぶんこっち」で決めていた。あとから年間取引報告書を並べて青くなる、というのを何度かやっています。手続きを軽く見ると、あとの自分の時間で払うことになる。いまはそう思っています。
いまは米国株の長期インデックスに切り替えて、「50歳になったら3億持てりゃいい」という考え方でコツコツやる形にしました。これは私の過去の記録であって、将来の結果を示すものでも、同じやり方を勧めるものでもありません。
口座の種類を決める前に、申込全体の流れを見ておくと選びやすくなります。証券口座の開設に必要なものを先に確かめると、この選択が全体のどこに出てくるかが分かります。
税率や制度の内容は改正されることがあります。この記事は2026-08-04時点で確認した内容です。ご自身の場合の税額や申告の要否は、国税庁の公式情報とお住まいの市区町村、または税務署でご確認ください。
