「毎月いくら」の入力欄で、手が止まった人へ

積立の設定画面まで進んで、金額を入れる欄で手が止まった。3万円と打って、消して、1万円と打って、また消した。この記事にたどり着く人は、だいたいそのあたりだと思います。

先に結論を書きます。金額は投資の側からは決まりません。家計の側から、引き算で決まります。手取りから、固定費と生活費を引き、近い予定の支出を引き、手元に残しておく現金を引く。残った範囲の中で決める、という順番です。読み終わると、自分の場合の上限がどこかが分かります。

先に置いておきます。投資信託には元本割れのおそれがあります。金融庁も、預貯金より高いリターンを期待できる一方で元本割れのおそれがある、と説明しています(2026-08-04時点)。だから「余っている額」ではなく「減っても生活が回る額」で考えることになります。

平均額を見ても、自分の金額は決まらない

検索すると、平均の積立額を出している記事がたくさん出てきます。数字としては面白いのですが、これを見て自分の金額を決めると、たいてい後で下げることになります。理由は単純で、平均を出している人たちと、あなたの家賃も、子どもの人数も、次の車検の時期も違うからです。

金融庁は資産形成の基本として、家計管理の基本を3つ挙げています。収入と支出をきちんと把握・管理すること、収支を黒字にすること、黒字分を貯蓄することです(2026-08-04時点)。積立の金額は、この3つめの「黒字分」の中から出てくる数字であって、他人の平均から出てくる数字ではありません。

同じページで、給料日に一定額を自動で貯蓄用の口座に移して、残りのお金で家計をやりくりする方法も紹介されています。積立の設定は、これを自動でやる仕組みでもあります。順番が「余ったら積み立てる」ではなく「先に引いて、残りで暮らす」になる、というだけの違いなのですが、この差はけっこう大きいです。

決める順番(4ステップ)

ここからは淡々と書きます。手元に、直近1か月の給与明細と、クレジットカードの請求明細を1枚ずつ置いてから始めると早いです。

  1. 手取りを確認する。額面ではなく、実際に振り込まれている金額です。ボーナスがある人は、ボーナスをいったん計算から外します。外して成立する金額のほうが、続きます。
  2. 固定費と生活費を引く。家賃・住宅ローン、通信費、保険料、電気やガスなどの料金、食費、交通費。ここは「理想の金額」ではなく「先月に実際に出ていった金額」を使います。
  3. 近い予定の支出を引く。1年から3年のうちに使うことが決まっているお金です。車検、更新料、教育費、帰省、家電の買い替え。ここを引かずに積立額を決めると、その時期に売ることになります。
  4. 手元に残す現金を決める。収入が止まったときに何か月ぶん持っていれば落ち着けるかは、雇用の形と家族構成で変わります。自分の場合の月数を先に決めて、その分を積立の計算から外します。

この4つを引いて残った金額が、上限です。上限をそのまま設定してもいいのですが、私は最初の設定では上限の半分くらいから始めることをよくやります。上げるのは気分がいいのに、下げるのは気分が悪い。同じ操作なのに、心理的なコストが違うからです。

制度の側にある上限は、ここにあります

家計の側の上限とは別に、制度の側にも上限があります。金融庁のNISA特設ウェブサイトで確認した範囲では、つみたて投資枠の年間投資枠は120万円です(2026-08-04時点)。毎月で均等に割ると、月10万円がその枠での上限になります。成長投資枠は年間240万円で、併用すると合計で年間360万円まで。生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)とされています。

ほとんどの人にとっては、家計の側の上限のほうが先に来ます。制度の上限に届くかどうかを気にするより、4ステップの引き算のほうを先にやったほうが早い、というのが実際のところです。

金額は、あとから変えられます

ここがいちばん伝えたいところです。積立の金額は、設定したあとで変更できます。減らすこともできますし、いったん止めることもできます。金融機関ごとに手続きの締切は違いますが、変更そのものができない、という作りにはなっていません。

私は、戻せるコストのものはまず一回やってみる、という決め方をずっとしています。以前、電気とWi-Fiの契約をセットで乗り換えたら、月々2,000円ほど下がりました。嫌なら戻せばいい、という前提があったから動けた話です。これはあらゆることに言えると思っていて、積立の金額もその一つです。

ただし、投資は「戻せば元どおり」ではありません。契約の乗り換えと違って、値動きのある商品はやめる時点の価格で終わります。だから可逆なのは金額の設定であって、投資した結果ではない。ここは分けて考えたほうが安全です。

この金額は、見送ったほうがいい

次に当てはまる場合は、いま金額を決めるより、家計の側を先に片づけたほうが結果的に早いです。

  • 4ステップの引き算をすると、残りがマイナスになる。この場合に無理な金額を入れると、数か月後に取り崩すことになります。
  • 金利の高い借入が残っている。返済を先に進めたほうが、家計全体では計算が合いやすい場面があります。
  • 先月いくら使ったかが分からない。これは金額を決められない状態です。金融庁も、家計管理の基本の一つめに「収入と支出をきちんと把握・管理すること」を置いています。
  • 金額を入れたあと、その数字が気になって眠れない。下げれば解けます。金額を下げるのは失敗ではなく、設定の調整です。

私の場合

私は1974年生まれの団塊ジュニアで、人材紹介会社の社長をやり、自分でも転職を5回、6社を渡り歩いてきました。金融商品取引業の登録も、投資助言の登録もしていない個人です。この記事の制度に関する内容は、金融庁のNISA特設ウェブサイトで2026-08-04に確認した範囲のものです。

金額の話で私が変えたのは、目標のほうでした。若い頃は短期の売買で大きく張っていて、20分で1,000万円近い含み益が出たこともあれば、そこから逆に振れて大きく負けたこともあります。そのあと、30代で億を作るという方向をやめて、50歳になったら3億持てりゃいい、というところまで下げました。目標を下げたら、毎月の金額のほうは無理をしなくてよくなりました。

……と書いておいて何ですが、金額を下げた最初の数か月は、正直つまらなかったです。増えている実感が薄い。そこを越えるまでが、いちばん止めたくなる時期でした。

金額が決まったら、次は設定画面の残りを埋めるだけです。積立の設定を最初から手順で見ると、金額の欄から先を続けて片づけられます。

家計のほうを先に整えたい人は、家計まわりの整理の順番を見ておくと、引き算に使う数字がそろいます。

投資信託には元本割れのおそれがあります。将来どうなるかは事前には分かりません。ここに書いたのは金額の決め方の順番であって、あなたにとっての正解の金額ではありません。判断はいつも、あなた自身のものです。制度の内容は変わることがあるので、最新は金融庁および口座を開く金融機関の公式情報でご確認ください。