「もったいないから貸せば」と言われて、決めきれずにいる人へ
兄弟に「空けておくのはもったいない、貸したら」と言われた。
調べてみたら家賃収入という言葉が出てきて、そのほうがいい気がしてきた。
この記事にたどり着く人は、だいたいそのあたりだと思います。
先に結論です。
売るか貸すかは、いきなり比べても決まりません。
先に決まっている順番が2つあるので、そこから片づけたほうが早いです。
読み終わると、いま自分が決めるべきことと、まだ決めなくていいことが分かれます。
白状すると、私も昔は「空いてるなら貸せばいい」と単純に思っていました。
空いている部屋には、勝手に借り手が来ると思っていたわけです。
来ませんでした。
先に決まっている順番が、2つあります
1つめは、名義です。
売るにも貸すにも、登記上の名義が本人になっている必要があります。
2つめは、期限のある制度です。
税の特例のなかには、期限と要件がセットになっているものがあります。
先に貸してしまうと、あとで選べなくなる組み合わせもある。
この2つは、売る側にも貸す側にも共通します。
だから比較より前に置きます。
名義がないと、どちらにも進めません
相続した不動産の名義を変える手続きが、相続登記です。
2024年(令和6年)4月1日から、申請が義務になりました(法務省・2026年8月7日に確認)。
法務省の案内には、こう書かれています。
相続で不動産を取得した相続人は、所有権の取得を知った日から3年以内に申請しなければならない。
正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料の適用対象になります。
施行より前に相続が開始している場合も、対象です。
この場合は猶予期間があり、2027年(令和9年)3月31日までとされています。
遺産分割が成立したときは、成立した日から3年以内に登記する形です。
ここは、選択の話ではありません。
売る人も貸す人も、どのみち通る道です。
先に済ませておくと、後ろがつかえません。
貸すと、外れるものがあります
ここからは淡々と書きます。
相続した空き家を売ったときに使える特別控除があります。
金額は3,000万円で、取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円です(国税庁のチェックシート・2026年8月7日に確認)。
この特例には、要件がいくつも並んでいます。
主なものを、そのまま引きます。
- 相続開始があった日から、同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却であること。
- 家屋と、その家屋の敷地の両方を相続で取得していること。
- 家屋が昭和56年5月31日以前の建築で、区分所有建物ではない。
- 相続開始の直前に被相続人が居住しており、ほかに居住していた人がいなかったこと。
- 売却先が第三者であり、売却金額が1億円以下であること。
そして、判断を左右するのがこの1項です。
家屋が、相続開始時から売却時まで次の用に供されている場合は、特例の適用を受けられません。
相続人等の居住の用、事業の用、そして貸付の用です。
つまり、いったん貸すという選択をすると、この控除の側の扉は閉まります。
期限のほうも、相続開始から数えて動いています。
誤解のないように書いておくと、これは急かす話ではありません。
順番の話です。
先に貸すと選べなくなる、という因果があるだけです。
それと、この特例が自分の家に使えるかどうかは、ここでは分かりません。
要件は上に挙げたもので全部ではなく、耐震基準や取壊しの扱いも絡みます。
金額の大きい話なので、税務署か税理士で確認してください。
貸す側のお金と、持ち続ける側のお金
貸すと、家賃が入ります。
同時に、申告する義務も入ります。
国税庁の説明では、不動産の貸付けによる所得は不動産所得です(2026年8月7日に確認)。
計算は、総収入金額から必要経費を引く形になります。
総収入に含まれるものが、思ったより広いところがポイントです。
賃貸料のほかに、次のようなものが入ります。
- 名義書換料や承諾料、更新料や頭金などの名目で受け取るもの。
- 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの。
- 共益費などの名目で受け取る電気代や水道代、掃除代など。
必要経費のほうにも、決まった顔ぶれがあります。
国税庁が主なものとして挙げているのは、固定資産税や損害保険料です。
減価償却費と修繕費も入ります。
ここで気づいてほしいのは、固定資産税の位置です。
貸せば経費になる。
持ち続けるだけなら、経費にする相手の収入がありません。
その固定資産税は、賦課期日である1月1日の所有者にかかります(総務省・2026年8月7日に確認)。
売っても貸しても持ち続けても、1月1日に持っていれば、その年度分は自分に来る。
ここは、どの選択肢でも同じです。
売らない側にも、窓口があります
貸す・活用するという方向にも、相談先の類型があります。
1つだけ、名前を置いておきます。
「HOME4U土地活用」は、土地の活用プランを複数の会社から一括で請求する形のサービスです。
売却の査定とは、目的がそもそも違います。
売値の目安を知る道具ではなく、使い方の案を集める道具です。
ここにはリンクを置きません。
私が中身を確かめていないので、名前と性格だけにとどめます。
収支の見通しにも踏み込みません。
それと、順番の話は変わりません。
この方向へ進むと、さきほどの3,000万円の控除の側は閉まります。
どちらが得かではなく、閉まる扉があることだけ押さえてください。
戻せる判断と、戻せない判断を分ける
私はふだん、変えられるものはさっさと一回変えてみる側の人間です。
「嫌だったら戻ればいいんだし、変えてみるっていうのはとても大事」だと思っています。
戻せるコストなら試したほうがいい。
試さないことのほうが、たいてい高くつきます。
ただ、実家の話にそのまま当てはめると、少しずれます。
貸すという選択は、契約としては戻せるように見える。
けれど税の特例の側は、貸した時点で戻りません。
だから私は、この判断をこう分けています。
戻せるものは、先に試す。
戻せないものだけ、先に確かめる。
もうひとつ、私が必ず見るものがあります。
その仕組みの取り分が、どこへ流れているか。
貸せば管理の手数料が毎月出ていき、売れば成約のときに仲介手数料が出ていきます。
……と書いておいて何ですが、取り分の話だけで結論は出ません。
実家には、金勘定に乗らない部分があります。
そこは各家庭の話なので、私が決められるところではありません。
比べられないのは、数字が1つもないからです
ここまで読んで、まだ決まらない人が多いと思います。
理由ははっきりしています。
売った場合の金額も、貸した場合の家賃も、手元に数字が1つもないからです。
比較というのは、両方に数字が入って初めて成立します。
片方が空欄のままだと、比べているようで、気分を比べているだけになります。
借り手がつく見込みが立っていて、修繕にかけるお金も決まっている人。
その人は、この先を読まなくて大丈夫です。
貸す方向で進めて構いません。
そうでないなら、先に埋めるのは売った場合の側です。
その数字は、1社に決め打ちして聞くものではありません。
地域や物件の種類で、向いている会社は変わってくる。
金額の目安を1つ持つところから始める段取りは、査定を頼める会社の候補と順位づけの理由を読むとまとめてあります。
1社ずつ頼む形と、まとめて頼む形の違いも、そこで並べています。
数字が出ても、売らなくていい。
知った上で持ち続けるのは、何も知らずに置いておくのとは別のことです。
この記事を書いた私について
私は1974年生まれの団塊ジュニアです。
人材会社をやりながら、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。
お金の話を書いているのは、資格があるからではありません。
私は税理士でもなければ、宅地建物取引士でもない。
だから制度の話には解釈を足さず、国税庁・法務省・総務省が公表している内容をそのまま置きました。
個別の物件でどちらが有利になるかは、ここでは扱いません。
家の状態と地域と家族構成で、答えが変わるからです。
この記事の内容は2026年8月7日時点で確認したものです。
税制も登記の制度も改正されます。
最新の要件は、国税庁・法務省・お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。
金額が大きい話なので、税の当てはめは税理士か税務署に確認してください。
登記のことは、法務局か司法書士が窓口になります。
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