1社に頼むのか、何社かに頼むのか
実家の売却査定を頼もうと決めて、その次で止まる。
頼み先の候補が、どれも同じ顔に見えるからです。
ちなみに私も、比較サイトを3つ開いて1時間ながめ、結局そっと閉じたことがあります。
選べなかったのではなく、何で選ぶのかを決めていなかった。
このページでは、査定を頼める相手にどんな型があるか、何を軸に選ぶかを整理します。
読み終わるころには、自分がどの型に頼めばいいかが決まっているはずです。
査定を頼むと、相手は何をしているのか
査定は、いまの相場でいくらくらいで売れそうかを見積もってもらう作業です。
頼んだからといって、売る義務は生じません。
出てくる数字は見込みであって、その値段で売れる約束ではない。
ここは最初に握っておいてください。
ただし、いいかげんな数字を出していいわけでもありません。
宅地建物取引業法は、売るべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。
つまり、読者の側には根拠を聞く筋が通っている。
これは値切り交渉ではなく、法律が想定している会話です。
実務では、業界の査定ソフトを使う会社が多い。
公益財団法人の不動産流通推進センターが出している価格査定マニュアルがそれで、戸建ては原価法、マンションや住宅地は事例比較法で数字を作ります。
地価公示や都道府県の地価調査のデータを内蔵した仕組みです。
だから、まったくの当てずっぽうが出てくることはない。
それでも会社ごとに数字が動くのは、入れる材料と読み方が違うからです。
頼み先は、3つの型に分かれます
名前を並べる前に、型で分けたほうが早い。
お金の流れも、連絡の来方も、型ごとにまるで違います。
1社に絞って、その会社に査定してもらう型
1社と話して、その会社が自社で数字を出します。
やりとりの相手が基本1人なので、手間の総量がいちばん小さい。
そのかわり、比べる相手がいません。
数字が高いのか安いのかは、この型だけでは分からない。
複数の会社へ、いちどに依頼する型
入力は1回で、そこから複数の会社へ話がわたります。
相場の幅が見えるのが利点です。
弱点も同じところから来ます。
会社の数だけ連絡が来るので、相前後して電話が鳴る。
これは、しつこいのではなく仕組みです。
各社にとっては早い者勝ちの局面なので、申し込み直後に集中します。
相続の手続きのほうから入る窓口
3つめは、売る話の手前にある窓口です。
名義や分け方の相談から入って、必要なら売却の話につなぐ。
分け方も名義もまだ動いていない段階なら、この型のほうが話が早い場面があります。
選ぶときに使う5つの軸
では、何を軸に選べばいいのか?
私が見ているのは、次の5つです。
1. 自分の物件が、そもそも対象に入るか
対応する地域も、扱う物件の種類も、会社ごとに違います。
ここで外れると、ほかの軸を比べても意味がありません。
だから、最初に確かめる。
順番を逆にすると、時間だけ使って振り出しに戻ります。
2. やりとりする相手が、1社で済むか複数社になるか
相続の直後にまず削れるのは、判断力ではなく体力です。
連絡の窓口が1つか複数かは、ここに直接効いてきます。
幅を知りたいなら複数社、まず1つ数字がほしいなら1社。
どちらが上等という話ではなく、目的が違うだけです。
3. 価格の根拠を、その場で聞ける相手か
金額だけ言ってくる相手には、根拠を聞いてください。
先に書いたとおり、根拠を示すのは相手の義務のほうです。
近所のどの取引と比べたのか。
建物をいくらと見たのか。
これに答えられる相手なら、数字の意味が分かります。
4. 頼んだあと、どこまで進むと契約になるのか
査定と、売却を任せる契約は別のものです。
任せる段になると媒介契約を結びますが、そこから縛りが始まります。
1社だけに任せる型の契約は、期間が3か月を超えられません。
そのかわり相手には報告の義務があり、2週間に1回以上、進み具合を知らせることになっています。
もっと強い型では、報告は1週間に1回以上。
この線を知っておくと、査定の電話で身構えずに済みます。
5. いま必要なのは査定か、それとも手続きの相談か
名義が親のままなら、売る手前で止まります。
兄弟の話がついていない場合も同じ。
その段階なら、査定より先に相談の窓口です。
金額だけ先に知りたいなら、査定を先に頼んでもかまいません。
同じ軸で並べ直すと、こう見えます
比べた軸は、上に書いた5つです。
そのうち表に入れたのは、対象の広さと、やりとりする相手の数と、どの場面で効くかの3つ。
残りの2つは、表になじみません。
価格の根拠の示し方も、契約までの距離も、会社より担当者で動くからです。
だから、その2つは聞き方のほうを本文に書きました。
もう1つ、先に断っておきます。
私はこの4つを自分で申し込んで確かめてはいません。
ですから表には、各社が公表している依頼のかたちだけをまとめています。
| 名前 | 依頼のかたち | 対象の広さ | 効く場面 |
|---|---|---|---|
| ラクウル/nocos | 相続の手続きに寄った相談の窓口 | 窓口ごとに扱う範囲が違う | 分け方も名義も、まだ動いていないとき |
| いえカツLIFE | 複数の会社へまとめて依頼する | 物件ごとに紹介先が変わる | 相場の幅を、先に広く知っておきたいとき |
| SREリアルティ(ソニーグループ) | 1社に絞って、その会社が自社で査定する | 物件ごとに、対象かどうかの確認が要る | 対象になる物件なら、1社完結で数字を1つ手にできるとき |
| ノムコム(野村不動産ソリューションズ) | 同じく1社に絞るかたち | 全国が対象 | 地域を選ばず、1社完結で数字を1つ手にしたいとき |
表の並びは、依頼のかたちごとにそろえただけです。
上から順に良いという意味ではありません。
対応する地域も、扱う物件の種類も変わります。
申し込む前に、それぞれの最新の案内でお確かめください。
私が最初に見るのは、いまどの段にいるかです。
分け方も名義もまだ動いていないなら、査定より前に済ませることがある。
相続の手続きに寄った窓口を先に置いたのは、そこで止まる人がいちばん多いからです。
分け方が決まらないうちに数字だけ集めても、話は前に進みません。
相続の直後は、そこを先に外したほうが早い。
手続きが動いているなら、次は相場の幅です。
複数の会社へまとめて出す型なら、1回の入力で幅のほうが先に見えます。
1社に絞る型を後ろにしたのも、優劣ではありません。
連絡の相手が1人で済むぶん、分け方と相場が見えてからのほうが効くと考えています。
その2件の前後に意味はありません。
小田急沿線に物件があるなら、先に見ておく1社
ここは、当てはまる人だけ読めば足ります。
小田急不動産の売却査定です。
対象は、小田急沿線に物件がある場合。
新宿から小田原までの小田原線、江ノ島線、多摩線の沿線です。
小田急グループの不動産会社で、沿線の物件を長く扱ってきました。
地域を絞った会社は、その範囲の取引事例が濃い。
沿線内にあるなら、上の4つより先に検討してかまいません。
沿線から外れているなら、そもそも選べない。
だから、表には入れずここに分けました。
該当するかどうかは、住所より路線で考えると早い。
実家の最寄り駅が小田急の駅かどうか、それだけです。
ただし、沿線かどうかの線引きと、会社の営業範囲は完全には一致しません。
駅名だけで決め打ちせず、小田急不動産の案内でお確かめください。
いま頼まなくていい場面と、その前に済ませること
次に当てはまるなら、今回は見送っても損はしません。
- 売る意思がまったくなく、金額を知る必要もない場合。
- すでに任せると決めている不動産会社がある場合。
- 遺言の効力や遺産の範囲を、相続人どうしで争っている場合。
- 借地や再建築不可など、物件の事情が特殊なとき。
- 相続人のひとりと、まだ連絡が取れていない場合。
争いがあるなら、先に家庭裁判所か弁護士です。
順番が逆になると、手戻りが大きくなります。
どれにも当てはまらないなら、あとは自分の条件で進むだけ。
その前に、桁の感覚だけ自分で作っておくと強い。
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の取引価格を地域ごとに見られます。
取引の当事者へのアンケートをもとに集めた情報で、誰でも見られる。
ただし、所在地は町や大字の単位で価格は有効数字2桁までです。
1件ずつの答え合わせには使えませんが、桁を外さないためには十分に効きます。
宅建士でも税理士でもない私が、これを書ける理由
先に立場をはっきりさせます。
私は1974年生まれの団塊ジュニアで、人材の会社をやっていました。
宅地建物取引士でも、税理士でも、司法書士でもありません。
相続した実家を売った経験もない。
だからここでは、選び方と順番の話だけを書いています。
そのかわり、不動産の数字は自分で触ってきました。
一棟持っていて、借入も自分で決めています。
そのとき確かめたのは、ただ1つ。
月々のキャッシュフローがプラスになるかどうかでした。
極論すれば、それだけです。
査定の相手選びも、同じ形にできます。
数字が高く出そうな相手を探すのではなく、出た数字の意味が分かる相手を選ぶ。
売値がこれから上がるか下がるかは、私には分かりません。
分からないものに賭けるより、いま手元で確かめられるほうを先に見ます。
実家の話は、切り離すより順番で見たほうが迷いません。
お金の手続きの順番をまとめて見ると、いま自分がどこにいるかが分かるはずです。
この記事の内容は2026年8月22日に確認しています。
制度も各社の扱いも変わります。
申し込む前に、法務局・国土交通省や各社の最新の案内でご確認ください。
これを書いた私がどういう人間かは、運営者情報のページに書いた経歴をご覧ください。

