訪問の2文字で身構える前に
実家の値段を調べたら、聞き慣れない言葉が2つ出てきた。
机上査定と、訪問査定。
訪問の2文字で、いったん手が止まる。
訪問と聞くと、身構えるのが普通です。
結論だけ先に。
迷ったら机上査定から。
数字を見てから、訪問に進むかを決めれば足ります。
読み終わると、申し込む前にそろえるものまで決まる。
ついでに書くと、机上査定の「机上」は机の上で済むからです。
ひねりは、ありません。
先に、この記事で扱わないことを1つ。
どこへ頼むかの選び方は、別の1枚に分けてあります。
相手を先に決めたい方は、頼み先の型と、そこで使う判断の軸からどうぞ。
ここでは、机上と訪問の話に絞ります。
机上査定と訪問査定は、何が違うのか
どちらも「価格査定」と呼ばれるものです。
公益財団法人不動産流通推進センターの案内を見ます。
価格査定とは、不動産会社が取引だけを目的に価格を評価すること。
売り出し価格を決める参考情報として使われます。
手法は、取引事例などの客観的なデータを使うものとされています。
勘で出しているわけでは、ない。
そのうえで、査定は大きく2種類に分かれます。
- 簡易査定・机上査定=周辺の取引事例や公的な価格情報から出す簡便な査定/相場のあたりをつける段階で使われる
- 詳細査定・訪問査定=現地で土地の形や建物の傷み具合まで見て行う詳細な査定/売り出し価格を決める段階で使われる
- 訪問査定では、登記記録や法規制、上下水などの整備状況も調べたうえで数字を出す
ここで1つ、混ざりやすい言葉を分けます。
不動産鑑定士が行う「鑑定評価」は、国の基準にもとづく別の制度です。
ここで扱うのは、不動産会社が売買のために行う価格査定のほう。
どっちが先か。これは順番だけの話です
結論は変わりません。
机上査定は、物件が特定できればだいたい始められます。
先に数字を1つ手に入れる。
そのうえで、訪問に進むかを決めればいい。
この順番なら、家の中を見てもらう前に一度立ち止まれます。
戻せることは、先に一度やってみるほうがいい。
私はそう思っています。
机上査定は、数字を受け取ったところでやめても失うものがありません。
訪問は、日程を合わせて在宅する必要がある。
だから後回しにするほうが、疲れません。
……と書いておいて何ですが、訪問でしか分からないこともあります。
建物の傷み方や、境界の具合。
データだけでは、そこまで拾えない。
だから売り出し価格を決める段階では、訪問査定のほうが向いています。
順番だけの、話です。
ここまでが、どの会社に頼んでも共通する話です。
あとは自分がどこへ、どんな形で頼むかだけ。
上の表で、依頼のかたちから決めると迷う回数が減ります。
どちらの査定でも、頼む相手はまだ決めなくていい
机上か訪問かは、査定の受け方の話です。
誰に頼むかは、そのあとで決めれば足ります。
ちなみに、机上を選んだから相手が減る、ということもありません。
どちらの受け方も、たいていの相手が用意しています。
相手には型があって、1社に絞る形と、複数社へいちどに出す形で連絡の来方がまるで違う。
その違いと選び方は、依頼先の型ごとの違いと、選ぶときの軸に分けて書きました。
申し込むと何が起きるのか、何を用意するのか
お金が動くのはいつか
ここからは淡々と書きます。
査定そのものは、無料で受けられるのが一般的です。
会社の収益源は、売買が成立したときの仲介手数料だから。
制度としても、はっきりしています。
仲介手数料の請求権が発生するのは、売買契約が成立したときだけ。
契約が成立するまで、支払うものはありません。
手数料の額には、上限があります。
宅地建物取引業法にもとづく上限で、これを超えて受け取れば法令違反です。
ただし上限は上限であって、当然にその額を請求できるわけではない。
私はお金の話を見るとき、まずその取り分が誰に流れているかを見ます。
査定した会社は、その後の売却も任せてほしいと考えている。
それを知って使えば、無料の査定は十分に役に立つ道具です。
用意するもの
机上と訪問で、必要なものが変わります。
- 机上査定=地図と登記記録(登記簿)など/ほとんどの場合、物件が特定できれば可能
- 地図は、不動産会社に備え付けのもので足りることも多い
- 訪問査定=上記に加えて、購入時の重要事項説明書や建築関係書類などの詳細資料
- 会社が独自に調べることもできるが、先に出せると査定は速く進む
- 住所・面積・築年を拾いやすい1枚=固定資産税の納税通知書
どの資料が要るかは、物件で変わります。
足りない分を不動産会社が調べてくれることもある。
そろわないから申し込めない、とはなりません。
5つの手順
- 手元の情報を集める/住所・面積・間取り・建てた年(納税通知書があれば、だいたい足りる)
- 机上査定を申し込む/物件の種類とエリアが対象かを、申込先の案内で先に確認する
- 数字を受け取り、根拠の説明を聞く/ここで止めてもかまわない
- 訪問査定に進むかを決める/売り出し価格を具体的に決める段階になったら進む
- 売却を任せるなら媒介契約を結ぶ/査定と媒介契約は別の手続きで、査定を受けただけでは義務は生まれない
つまずきやすいところ
- 名義が本人になっていない/売却には登記上の名義が要るので、査定は受けられても売る段階で止まる
- 会社ごとに渡す情報が違う/前提条件が違うと査定価格は比較できないので、同じ物件情報を渡す
- 不具合を伏せてしまう/雨漏りや傾きの情報も出したほうが、数字は正確になる
- その場で決めてしまう/媒介契約を求められても、一度持ち帰って構わない
査定額は「その値段で売れる」という約束ではありません
ここが、いちばん誤解されるところだと思っています。
査定価格は、売り出し価格を決めるための参考情報です。
契約が成立した価格は「成約価格」と呼ばれ、査定額とは別の数字。
売り出してみないと分からない部分が、どうしても残ります。
その成約価格の傾向は、自分でも見に行けます。
指定流通機構(レインズ)が、実際に売買された物件の価格を検索できるサイトを公開しているからです。
相場観をつかむための環境として、誰でも使えるように整えられたものです。
そしてもう1つ。
同じ物件でも、会社によって査定額に差が出ることがあります。
これも普通に起きること。
差が出たときの見方を先に持っておくと、落ち着きます。
差の理由はたいてい、使った取引事例と前提のちがいです。
向かない人・今は見送っていい人
次に当てはまる人は、今回は見送っても損はしません。
手続きは逃げないので、条件が整ってからで間に合います。
- 在宅の時間を作れない人/訪問査定は見てもらう時間が要るので、机上だけにする選び方もある
- 誰が引き継ぐかが決まっていない人/遺産分割も相続登記も進んでいないなら、先にそちらから
逆に、どれにも当てはまらないなら、あとは自分の条件で進めるだけです。
対応エリアや物件の種類は、変わることがあります。
申し込む前に、自分の物件が対象かどうかも確かめておくと空振りしません。
私が不動産の数字を見るとき、最初に見ていること
私は1974年生まれの団塊ジュニアです。
かつて人材会社をやっていて、自分でも転職を5回、6社を渡り歩いてきました。
不動産については、売る側ではなく借りて持つ側で数字を触ってきた人間です。
資格があるから書いているわけでは、ありません。
収益物件の話で、私が確かめるのはほぼ1つ。
月々のキャッシュフローがプラスになるか。
極論すれば、これだけです。
金利が高くても、利回りが高ければいい。
利回りが低いなら、金利は安くなければいけない。
その釣り合いだけを見ます。
表面利回りは、実質だとおおむね半分になります。
表面7%なら、実質3.5%くらい。
そこを飛ばすと、あとで月々が回りません。
査定額も、同じ性質の数字だと思っています。
大きいほうが嬉しいのは当たり前。
ただ、大きい数字が正しい数字とは限りません。
だから私は、金額そのものより、その出し方の説明を先に聞きます。
……と書いておいて何ですが、実家の話は数字だけでは動きません。
家族の話でも、あるからです。
それでも、数字が1つあると入口が変わります。
「売ろう」ではなく「いくらか分かった」から始められる。
金額を知って持ち続けると決めたなら、何も知らずに放置しているのとは別のことです。
お金まわりの手続きは、査定だけを切り離すより順番で見たほうが迷いません。
お金まわりの手続きの順番をまとめて見ると、どこから手をつけるべきかが分かります。
制度や手数料の条件は、変わります。
この記事は2026年8月7日時点で確認した内容です。
申し込む前に、最新の案内をご確認ください。
売却益にかかる税金や特例の要件は、物件ごとに違います。
金額の大きい話なので、ここでは扱いません。
税務署や税理士に、ご確認ください。
机上から入ると決めたら、次は申し込む先です。
頼む相手を絞りこむための判断軸を先に読むと、1回で決まります。
この記事を書いた私がどういう人間かは、運営者情報のページに書いた経歴をご覧ください。

