任意整理は、債務整理の4つの方法のうちの1つです。

債権者と交渉し借金を減らすことにより、債務者の支払い負担を減らし、完済を目指します。

ローンやクレジットカードの借金を返せない状況になって苦しんでいる方なら、返済の負担を減らすために、任意整理を行うのも1つの方法でしょう。

債務整理の中でも、任意整理はもっともよく利用されます。

任意整理を行えば、現在の借金額が減る可能性はありますが、いくつかデメリットもあるのです。

任意整理とは?

任意整理では、債権者である貸金業者と債務者が交渉し、利息のカットや返済回数の変更を決めます。

毎月払いでの返済であれば、通常は36回払いにすることが多く、債権者によっては60回払いぐらいまで応じてくれることもあります。

しかし、36回払い以上にしないと返済が苦しいとなれば、借金が相当多いので、任意整理以外の債務整理を検討した方がいいかもしれません。

元金に対する利息カットも、よく行われます。

このために、任意整理手続きが完了すれば、元金のみ分割払いで返済していく方が普通です。

ただし、任意整理は債権者と交渉する方法であり、あくまで交渉なので、必ずしも希望通りに利息カットや分割払いに応じてくれるとは限りません。

最近は、貸金業者の業務悪化によって、利息カットに応じない債権者がいるようです。

法定金利以上の金利で債権者から借入して返済をしてきた方なら、過払い金請求ができるかもしれません。

過払い金で借金を返済すれば、借金額によっては完済になる可能性もあります。

任意整理は収入のある人向けの債務整理

任意整理を行うと、分割払いで借金を返済していくために、基本的に収入のある人が行える債務整理です。

収入から生活費を捻出し、その上で返済するので、十分に生活費を確保できるぐらいの収入があるのが望ましいです。

借金を分割払いにしても、返済が難しいとなれば、他の債務整理を検討するでしょう。

通常は、任意整理によって返済総額はいくらになるか、分割払いでの毎月の金額はいくらかと算出し、収入状況と照らし合わせて、完済できるかどうか考えます。

36回の分割払いであれば、3年間での完済となり、収入から生活費を引いても返済できるとわかれば、任意整理を行っていきます。

1度任意整理を行った債権者とは、再度の任意整理での交渉は難しく、交渉には応じてくれない場合が多いです。

十分に収入に余裕があるなら任意整理を、余裕がないなら他の債務整理を検討するのが無難です。

ちなみに、任意整理後に返済ができなくなった人は、個人再生や自己破産などの他の債務整理も行えます。

任意整理の具体例

任意整理をした場合にどれぐらい借金が減るか、具体例で見てみましょう。

任意整理前

借入額 金利 月々の返済額  返済総額
A社 50万円 18% 18,000円 65万円
B社 60万円 18% 21,000円 78万円
C社 30万円 18% 10,000円 39万円
合計 140万円 49,000円 182万円

 

任意整理後

借入金 金利 月々の返済額 返済総額
A社 50万円 0% 13,000円 50万円
B社 60万円 0% 16,000円 60万円
C社 30万円 0% 7,000円 30万円
合計 140万円 36,000円 140万円

※計算は、端数を省略しています。

※一例であり、返済方法や金利により個々のケースは違います。

利息をカットし、元金のみの返済となり、具体例のケースでは182万円の総額から140万円まで減額できました。

仮に過払い金があれば、さらに減額ができるでしょう。

月々の返済額は、49,000円から36,000円と、13,000円の減額です。

任意整理の費用

任意整理は、債務者が個人で手続きを行うことも可能ですが、書類作成や手続き、債権者との交渉があるので、普通は弁護士に依頼し、代理で行ってもらいます。

弁護士へ依頼すると、弁護士報酬を支払うこととなり費用が発生しますが、分割払いが可能です。

任意整理では弁護士に依頼したときは、債権者ごとに費用が発生します。

例えば、A社とB社に対して債務整理を行うなら、2社分の弁護士費用を支払います。

着手金

弁護士に任意整理をしてもらうための依頼料です。

任意整理の交渉の相手は、信販会社や消費者金融などいくつかあり、相手によって着手金が変わる弁護士が多いです。

報酬金(減額報酬金)

債権者が任意整理に応じて、和解が成立したときの費用です。

任意整理による減額分に対してかかります。

弁護士事務所では、減額報酬は10%または無料という場所が多いです。

例えば、100万円の債務が60万円まで減ったとします。

減額報酬が10%であれば、減った分の40万円の10%の4万円が、弁護士に支払う減額報酬です。

そのほかの費用

債権者に過払い金返還請求をしてもらうならば、過払い請求成功報酬が発生します。

過払い金として回収できた金額の、何%と設定している弁護士事務所が多いです。

成功報酬は、回収した過払い金の中から支払えます。

債権者から、貸金返還請求訴訟などの訴訟を起こされた場合には、弁護士が応じます。

裁判のために弁護士が裁判所に出頭する費用を、債務者は支払います。

任意整理のメリット

任意整理は、債権者と交渉し和解が成立すれば、ほぼ確実に元金に対する利息をカットして、0にできます。

これによって、元金のみを返済していくこととなり、債務者の返済負担は減るでしょう。

さらに、分割返済の回数を増やせれば、負担少なく完済を目指せるので、生活再建の目処も立ちます。

そのほかにも任意整理のメリットは多いです。

支払い義務が一旦ストップする

債務者が弁護士に、任意整理の手続きを依頼すると、弁護士は債権者に対し受任通知を送付します。

債権者が受任通知を受け取った時点で、債務者の返済義務は一時的にストップし、任意整理の手続きが完了するまでは、借金の返済を行う必要がありません。

貸金業法第21条第1項により、債務者などが裁判所における民事事件の手続きをとり、債権者に対しその旨を書類で通知したときは、債権者は正当な理由なく取り立てを行ってはいけないと決められています。

貸金業法での決まりがあるために、受任通知を債権者が受け取れば、返済義務は一時的にストップするのです。

裁判所を通じず手続きが進められる

任意整理は、裁判所を介さずに、債務者と債権者が借金の返済について交渉を行う方法です。

債務者は裁判所に出向く必要はないので、負担少なく行える債務整理と言えるでしょう。

行うにあたっての手続きは比較的簡単であり、自動車や持ち家などの財産を処分する必要もありません。

手続きをするにあたっては、債務者に対する条件が緩く、行いやすい債務整理と言えます。

債務整理する借金を選べる

複数の貸金業者からお金を借りて借金をしているなら、債務整理する債権者を選べます。

基本は、すべての貸金業者を任意整理の対象にした方がいいですが、以下のような理由で一部の業者のみを外すこともできます。

奨学金などの保証人をつけた借金で、保証人に迷惑をかけたくない
オートローンや住宅ローンなどの、所有権留保のある借金
給与口座と同じ口座で利用の借金で給与と分けることができない
10万円程度の少額で、任意整理しても減額幅が少ない借金

任意整理から外したい業者がいるなら、弁護士に依頼時に相談してください。

なぜ外したいか、その理由を明確にしておきましょう。

官報に情報が載らない

政府が、毎日発行している法令制定や改定、相続や破産などの裁判に関する情報を載せている冊子が官報です。

個人再生や自己破産をすると、官報に破産者の名前や住所などが記載されますが、任意整理を行った場合は、裁判所を介さないために、官報に名前は載りません。

官報は破産者本人や金融機関が見ることが多く、一般の人はほとんど見ません。

官報に破産者の名前が記載されても、知人や身内に債務整理を行った事実は、知られることはほぼないです。

しかし、官報に載らなければ、不名誉な事実が世間に広まらないので、破産者として気持ちの上で安心できるでしょう。

任意整理のデメリット

任意整理は、借金の利息をなくし、返済期間を延ばせるので、債務者の負担が減りメリットが多いです。

ただし、本来支払うべき利息を免除することになるので、デメリットも発生します。

信用情報に記載される

任意整理も含めて債務整理を行うと、信用情報機関が管理する信用情報に事故情報として記載されます。

信用情報とは、個人の借金に関する利用状況を記載したものであり、クレジットカードやローンの申込み、借入や返済、返済遅延や延滞、そして債務整理の内容が記されます。

貸金業者がカードやローンの利用申込みがあれば、申込者の信用情報を見て、融資するかどうか決めます。

任意整理は借金の利息を免除する方法であり、借金の支払いが苦しい人が利用します。

そのために、信用情報に任意整理の記録があれば、お金を借りても返済できない人物と見られるために、利用者に対しては融資不可と判断します。

  • クレジットカードを一定期間作れない
  • ローンが一定期間組めない

任意整理を行えば、このように一定期間クレジットカードは作れず、あらゆるローンは利用できません。

カードやローンの種類により違いますが、任意整理手続き完了後、5年~7年は利用できないです。

ローンは、カードローンはもちろん、住宅ローン、オートローン、ショッピングローンなどすべてです。

見落としがちなのが、携帯電話やスマートフォンの本体代金の分割払いです。

ショッピングローンの一種となるので、任意整理後5年~7年は分割払いでの購入はできません。

一括払いだと、携帯電話やスマートフォンの本体購入は可能です。

また、クレジットカード払いのみ対応の商品やサービスの利用も難しいでしょう。

任意整理に応じない債権者がいる

任意整理は、債権者との交渉なので、相手が応じないと借金をどうするか話が進みません。

最近は少ないですが、交渉に応じない業者がいます。

特に経営が悪化している業者だと、応じない傾向にあります。

また、利息をいくらかつけないと交渉しない、分割回数を制限するような業者も存在します。

任意整理で借金を減らせるかどうかは、その業者次第となるでしょう。

借金があまり減らないケースがある

任意整理は利息をカットするので、元金は減りません。

奨学金や住宅ローンなどの低金利ローンは、任意整理を行っても、あまり借金は減らないです。

債務整理を行うにもお金がかかるので、減額幅が少ないとなれば、個人再生や自己破産を検討した方がいいでしょう。

逆に、高金利で借りている借金、法定利息以上で融資を受けた借金は、任意整理を行うと借金を多く減らせます。

法定金利以上での利息があれば、過払い金請求もできるので、元金も減らせるかもしれません。

任意整理の手続きの流れ

任意整理の手続きを、弁護士に依頼したときに流れは、以下のようになります。

弁護士と相談

依頼をする弁護士事務所に向かい、自身の借金の状況を説明し、任意整理をしたいことを伝えます。

任意整理の費用や手続きについて、弁護士から説明を受けるので、わからない部分があれば質問しておきましょう。

借金をしている貸金業者名、借入残高、借入期間がわかるようにしておくと、相談がスムーズに進みます。

任意整理後に、弁護士に伝えていなかった利用のある貸金業者が見つかるということもあるので、相談時は見逃している業者はないか十分に確かめてください。

相談は、多くの弁護士事務所で無料で受け付けています。

委任契約締結

弁護士から説明を受けて、金額や手続きの流れについて納得できたら、任意整理依頼の契約を結びます。

契約締結を行うと、着手金が必要な弁護士には、いくらかの着手金を支払います。

どうしても着手金が支払えないとなれば、後払い可能か相談時に相談してください。

着手金無料の弁護士事務所もあります。

受任通知発送

弁護士が各債権者に対し、受任通知を発送します。

債権者が受任通知を受け取った時点で、債務者は任意整理和解成立まで、借金の返済をしなくて済みます。

また、借金についての窓口は、債務者から弁護士に移行し、貸金業者とのやりとりはすべて弁護士が行ってくれます。

このために、貸金業者から債務者に連絡がくることもありません。

債権調査、利息の再計算、債権額決定

受任通知を送ると同時に、債権者から債務者の取引履歴を取り寄せます。

取引履歴を基に、利息制限法にそって利息を再計算し。過払い分がないか算出します。

さらに、債務者の収入を考慮し、債権額を決定します。

この債権額をもって、債務者と交渉をしていくのです。

和解交渉、和解締結

債権額をもとにして、債務者と弁護士が和解交渉を開始します。

債務者が月々いくらなら無理なく返済できるかなどと、債務者の事情をふまえて交渉してくれます。

任意整理での交渉内容は、利息カット、そして分割返済の回数の2つです。

債権者と弁護士との間で、話がまとまれば、和解契約締結を行い、契約書類を作成します。

ここまでが、任意整理の交渉の流れです。

和解成立後に契約書類を作成すれば、債務者が契約内容の返済計画に基づき、分割返済します。

最近は任意整理交渉に応じない業者もいます。

そのために、任意整理を考えているなら、交渉実績のある弁護士に依頼すると、債権者との交渉がスムーズにいきやすく、任意整理を的確に行ってくれます。

まずは、任意整理に強い弁護士や司法書士に連絡してみてください。

借金問題でお困りの女性の方へ

あなたがもし女性の方なら、女性専用の債務整理窓口がおすすめですよ。

専門の女性スタッフが、親切に話を聞いてくれますので、気軽に連絡してみてください。