法的な強制力があるので、個人再生の手続きが完了すれば、確実に借金を減らせます。
借入が多い人や、多重債務で借金を返せない状況になっているような人は、個人再生を検討するのも1つの選択肢でしょう。
多額の借金があり、財産を手放さずに債務整理したい方には、個人再生はメリットが多いです。
個人再生とは、どんな債務整理の方法なの?
どれだけ借金が減らせるか説明する前に、個人再生はどんな債務整理の方法なのか、詳しく見てみましょう。
個人再生は、裁判所を通じて借金を減らす方法です。
利息のカットの他に、元金の減額もできますよ。
裁判所に申立を行い、必要書類を提出して手続きを進め、借金を5分の1~10分の1まで減らせます。
最大で現在の借金の9割を減らせる債務整理の方法です。
減額した借金は、3年~5年程度の時間をかけて、分割返済して完済します。
返済期間については、通常は3年となっており、特別な事情がある人は、5年にしてもらえます。
個人再生を行っても、住宅や車などの高価な財産は手放す必要はなく、財産を手元に残しながら債務整理できます。
借金が多く、現状では返済が厳しいけど、住宅や車などの処分したくない財産を所有している方がよく利用する方法です。
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者再生がありますので、どちらの方法で行うか決めていきます。
個人再生を行えるのは、どんな人?
一定額の借金以内であり、なおかつ収入のある人が個人再生を行えます。
個人再生を行うための条件は、主に以下の4つです。
- 将来的に継続した収入があり、借金返済ができる
- 借金の総額が5000万円以下
- 小規模個人再生手続きでは、債権者から半数の反対がないこと
- 給与所得者再生手続きでは、過去7年以内に債務整理をしていないこと
借金額が5000万円を超えていると、個人再生はできませんので、注意しましょう。
ただし、個人再生での借金額は、住宅ローンや太陽光発電ローンなどは除外できます。
もしも、5000万円以上の借金のある方は、債務整理するなら自己破産を行っていきます。
事業者であれば、通常民事再生手続きが可能です。
将来的に継続した収入もないといけません。
収入が少ないと個人再生できないか心配かもしれませんが、アルバイトの方であれば、勤務期間が長いと、個人再生可能と認められることが多いです。
年金受給者であれば、障害年金の方は状況によっては、認められないかもしれません。
日雇いの短期バイト、無職の方などは、残念ながら個人再生はできないです。
借金を作った原因がギャンブルであっても、個人再生は可能です。
「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つあります
個人再生は、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの種類があります。
どちらも個人再生であり、手続きを完了すれば、借金を大幅に減らせる点は変わらないですよ。
アルバイトや自営業などの人でも、条件を満たせば、小規模個人再生手続きが可能です。
ただし、債権者の半数が個人再生に反対しないことが条件です。
会社員などの、将来的に安定した収入のある方は、給与所得者再生手続きを行うことが多いです。
将来的に収入の変動が少ない人が行うことができ、債権者の半数以上の反対があっても問題なく行えます。
ただし、個人再生手続き後に決定した借金額は、債務者の2年分の収入から生活費と税金を引いた金額以上でないとなりませんので、注意しましょう。
借金額は最低弁済額を基にします
個人再生で減額した借金額を、最低弁済額と言います。
最低弁済額は、負債額、財産額、収入額の3つを考慮して決めます。
- 負債額
借金額 | 負債額 |
100万円未満 | 全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 借金額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 借金額の10分の1 |
- 財産額 : 車や住宅などの財産の総額
- 収入額 : 収入から税金と法律で定めている生活費を引いた2年分の金額
小規模個人再生では、借金額と財産額を比べて、多い方を最低弁済額とします。
給与所得者等再生では、借金額、財産額、収入額を比べて、多い方を最低弁済額とします。
決定した最低弁済額を、通常は3年間、事情のある人は5年かけての分割返済です。
個人再生を行ったら、どれぐらい借金が減るの?
個人再生を行うと、どれぐらい借金を減らせるのか、気になる部分でしょう。
以下の具体例を参考にしてください。
- 個人再生前
借入額 | 金利 | 月々の返済額 | 返済総額 | |
A社 | 150万円 | 15% | 34,000円 | 216万円 |
B社 | 100万円 | 15% | 29,000円 | 140万円 |
C社 | 60万円 | 18% | 21,000円 | 78万円 |
D社 | 40万円 | 18% | 14,000円 | 52万円 |
E社 | 120万円 | 15% | 28,000円 | 171万円 |
総額 | 470万円 | 129,000円 | 657万円 |
- 個人再生後
借入額 | 金利 | 月々の返済額 | 返済総額 | |
A社 | 30万円 | 0% | 8,000円 | 30万円 |
B社 | 20万円 | 0% | 5,000円 | 20万円 |
C社 | 24万円 | 0% | 6,000円 | 24万円 |
D社 | 16万円 | 0% | 4,000円 | 16万円 |
E社 | 25万円 | 0% | 7,000円 | 25万円 |
総額 | 115万円 | 30,000円 | 115万円 |
※計算は、端数を省略しています。
※一例であり、返済方法や金利により個々のケースは違います。
個人再生では、利息をカットし0%になるので、確実に借金が減って返済負担が減ります。
今回の例では、月々の返済額が129,000円から30,000万円と、99,000円の大幅減額です!
10万円以上の返済を行っていたのが、3万円などと数万円台になれば、とても楽になりますよね。
目安として5分の1程度の減額になるので、ご自身の借金で是非とも計算してみてください。
個人再生の費用はどれぐらいかかるの?
借金がどれぐらい減るか、そして個人再生を行うなら、いくら費用がかかるか知りたいですよね。
借金をしている債務者の方が書類を用意し手続きを進めて、個人再生を行うこともできます。
普通は、書類の書き方や手続きの仕方などと、わからない部分が出てくるので、弁護士に依頼し代理で行ってもらうのが一般的です。
スムーズに手続きを進めるためにも、弁護士に依頼するのがおすすめです。
手続きは、裁判所を通じて行います。
このために、弁護士と裁判所への費用がかかります。
裁判所に支払う費用
個人再生は、債務者の住んでいる地域を管轄する、地方裁判所に申し立てします。
たとえば、あなたが東京に住んでいれば、東京地方裁判所に申し立ててください。
裁判所により若干違いますが、費用は以下の通りです。
- 収入印紙代 : 10,000円
- 官報公告費用 : 12,000円
- 連絡用郵便切手代 : 4,000円~8,000円
- 個人再生委員に対する報酬 : 150,000円~250,000円
個人再生が適切に行われるように、裁判所が個人再生委員を選任します。
代理人や弁護士がいるなら15万円、債務者本人が申立するなら25万円が個人再生委員への報酬です。
東京地方裁判所に申立するときは、どんな場合にも必ず個人再生委員は選任されます。
そのほかの地方裁判所では、代理人や弁護士がいる場合は選任されないことが多いようです。
選任されなければ、報酬を支払う必要はありません。
着手金
弁護士に依頼するとなれば、委任契約時には、着手金を支払います。
住宅ローンを借金から外す住宅資金特別条項を利用するかどうかで、着手金の変わる弁護士事務所が多いようなので、依頼する事務所で詳細を確認してください。
成功報酬
個人再生の手続きを行い、再生計画許可決定が確定したときに、弁護士に支払う費用です。
つまりは、個人再生を行い、借金の減額が決定したときですよ。
個人再生の申し立てしても、減額までいかなければ、成功報酬は発生しないです。
これも、住宅ローンを借金から外す住宅資金特別条項を利用するかどうかで、金額が変わる弁護士事務所が多いようです。
そのほかの弁護士への費用
訴訟などの特別な事態が発生したときは、弁護士への費用が発生します。
裁判のために弁護士が出廷すれば、日当が必要です。
また、過払い金請求を行ったときも、債権者との和解が成立すれば、費用がかかります。
個人再生のメリットは何があるの?
個人再生は債務者の借金の負担を減らせるのが、大きなメリットです。
そのほかにも、メリットがあるので、次から紹介します。
どんなメリットがあるか、参考にしてださいね。
借金の大幅な減額ができるよ
個人再生ができれば、借金は5分の1~10分の1に減額できます。
たとえば、5000万円の借金があれば、最大で500万円への減額です。
大幅に借金が減ると嬉しいですよね。
元金を減らすのみならず、利息をカットできます。
減額した借金は、3年~5年かけて分割返済していくので、無理なく返済できるでしょう。
さらに、債務整理の中でも、法的に強制力があるので、裁判所で個人再生計画の許可決定がされれば、借金は必ず減額されます。
裁判所で決定されれば、債務者、つまりはお金を貸している人が、個人再生に反対しても、そのまま借金の減額ができます。
ただし、小規模個人再生では債権者の半数以上の同意が必要なので、注意しましょう。
必要な財産を手放さずに済む
個人再生では、残せる財産と処分する財産があります。
たとえば、東京地方裁判所で個人再生を行うときには、残せる財産は以下の通りです。
- 家具・家電など時価20万円以内の財産
- 99万円までの現金
- 20万円までの銀行口座に入った預金
- 時価20万円以内の自動車
- 返戻金20万円以内の生命保険
時価20万円以下の自動車であれば処分せずに済みます。
しかし、自動車ローンの残っている車であれば、処分しないとならず、競売にかけられるなどして売り払われます。
個人再生では、住宅資金特別条項という条項を利用可能です。
これは、住宅ローンの残っている持ち家は、処分せずに個人再生手続きを行える制度です。
個人再生を行えば、住宅ローンはそのまま支払っていき、同時に借金も分割で返済します。
ローンを払い終わった持ち家であれば、個人再生するときには、処分しないとなりません。
しかし、持ち家を売却し借金返済に充てられるならば、通常は個人再生をせず自宅売却を行い、そのお金で借金を完済します。
同じく、他の保有財産が借金額よりも高い価値があるなら、売却し借金返済に充てるのが普通です。
債権者からの取立と強制執行を停止できる
債権者に、個人再生の申立を行うことを知らせる受任通知を送ると、通知を受け取ったときから、債務者の返済義務は一時ストップします。
つまりは、個人再生で借金を減額し、分割返済を開始するまでは、債務者は一時的に返済はしなくてもかまいません。
また、債権者からの取立や強制執行も停止できます。
貯金や給料などを、強制的に取り立てられることはありません。
これらによって、債務者は個人再生の申立に専念できるでしょう。
個人再生にはデメリットもあります
個人再生は、債務整理の中でも借金を大幅に減らせて、債務者にメリットがあります。
支払うべき借金の免除を決定してもらうのは個人再生であり、免除するためにデメリットも発生します。
一定期間クレジットカード作成、さらにローンを組めない
個人再生を行うと、信用情報に記録され、一定期間はカード作成もローン利用も出来ません。
信用情報とは、信用情報機関が管理する情報です。
- クレジットカード作成
- ローン申込み
- 借りたお金の借入や返済
- 返済延滞
- 個人再生を含む債務整理
これら、利用者の状況をその都度記録するのが、信用情報です。
カード会社やローン会社は、利用申込みがあると申込者の信用情報をチェックし、借金の返済を滞りなく行っている人物かチェックし、利用可否を決めます。
信用情報に債務整理の記録があれば、返済すべき借金を踏み倒した人物とわかります。
そのために、カード会社やローン会社は、新たにお金を貸しても返済は難しいと考え、申込みを断ります。
信用情報に5年~10年は個人再生をした記録は残るので、その間はカード作成もローン利用もできないです。
裁判所が個人再生計画の許可決定した日から、信用情報に記録開始されます。
自分で個人再生するとなれば、必要書類が多く手続きに時間がかかる
個人再生の手続きを行うには、必要となる書類は多いです。
- 申立書、陳述書、債権者一覧表、家計表、財産目録
- 戸籍謄本、住民票
- 給料明細書
- 退職金見込み額証明書
- 所得課税証明書
- 通帳のコピー
- 車検証のコピー
- 登録事項証明書
- 保険証書
- 解約返戻金証明書
- 借用書
- 納税通知書
これは一例です。
申立時には申立書以下一式、手続き開始時には、戸籍謄本と住民票で申立人であると証明し、さらに財産に関する書類は、所有財産があればすべて提出します。
自動車を保有すれば、価値を証明するために、査定してもらい査定書を用意しないといけません。
そして、再生計画案を作り、裁判所に計画案が認められば、計画にそって借金を分割返済します。
過払い金請求をするなら、さらに書類は増えるでしょう。
個人再生の申立てから、再生計画が確定するまでには、遅くて6ヶ月ぐらいかかります。
書類に不備があれば、さらに時間がかかり、確定までには6ヶ月以上かかるでしょう。
債務者が書類を用意し、申立を行うのは大変なので、個人再生をスムーズに進めるなら、弁護士や司法書士などの専門家に依頼した方が良いです。
借金が増えることがあるので注意!
たとえば、1000万円の借金があれば、5分の1とすると個人再生で200万円までに減額できます。
個人再生には清算価値保障原則が存在します。
これは破産したときに財産を処分したときの価値よりも、個人再生で返済する借金額は多くなければいけないという決まりです。
たとえば、1000万円の借金があり、ローンの払い終わった自宅の価値が1300万円であれば、差し引き分の300万円が個人再生での返済額となります。
自宅がなければ、200万円の返済額で済むので、大幅な借金額増加となるでしょう。
お金に換えられる財産が多く、借金完済に当てられるなら、個人再生をせずに財産で借金返済した方が良いかもしれません。
ただし、それでも財産を残したいので、個人再生を選ぶような人もいます。
この辺は借金を抱えている人の考え方次第でしょう。
身内や知人からの借金も個人再生で返済しないといけません!
個人再生では、一部の債権者だけ手続きから外すことはできません。
身内や知人からの借金は、迷惑をかけたくないので、個人再生から外すということはできないです。
慰謝料も個人再生での手続き範囲に含まれます。
減額することによって、後で揉めそうな借金があれば、個人再生を行うことを伝えて理解を得てもらった方が良いでしょう。
借用書を作らず口約束で借りたお金も、個人再生を行うときには手続き対象です。
ちなみに、交通違反の罰金などの罰金刑のお金、所得税や住民税などの税金は、個人再生で減額することはできません。
個人再生の手続きの流れを見てみましょう!
個人再生の手続きの流れは、以下の通りです。
ここでは、弁護士に手続きを依頼したとして、手続きの流れを紹介します。
弁護士への依頼と受任通知送付
弁護士に個人再生の手続きを依頼すると、委任契約を結びます。
その後、弁護士が各債権者に受任通知を送付し、債権者に届いた時点で、取立と返済がストップします。
また、契約書や取引履歴の提出を促す書類も一緒に送ります。
債権額と金利の算出、申立書類の作成
債権者から届いた契約書や取引履歴を基に、債権額や金利を計算します。
これらの計算によって、借金額を確定させます。
法定金利以上での借入をしていたなら、過払い金請求が可能です。
さらに、申立書類の準備を行います。
借金の総額や毎月の返済額などを書いた計画書も提出します。
個人再生では、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを利用するか、さらに住宅ローンは借金に含むか含まないかを決めます。
個人再生の申立て
弁護士が必要書類を持って、裁判所に個人再生の申立てをします。
申立書が受理され書類の審査が完了すると、裁判所から個人再生委員が任命されます。
個人再生委員は、債務者の財産や収入を調査し、適切な再生計画案を作成するために助力してくれる人です。
弁護士などのその道に精通した人が、委員として任命されます。
個人再生委員との打ち合わせ
弁護士が個人再生委員に任命されば、債務者は、弁護士のいる弁護士事務所に出向き、打ち合わせします。
債務や資産の確認、必要となる書類があれば提出しておきます。
個人再生手続き開始を決定するか、債務者から必要となることを聞きます。
手続き開始の決定と履行テスト
個人再生委員の意見を聞き、裁判所が手続き開始の決定をします。
これをもって、正式に個人再生手続き開始です。
さらに、東京地方裁判所で申立てしたなら、履行テストが行われます。
本当に個人再生後の借金を分割返済できるか、計画した弁済額と同じ月額分の金額を債務者は振り込みます。
予行演習のようなものであり、債務者が振り込みを行い、通常6ヶ月間履行テストは継続です。
つまり、6ヶ月分の分割返済を、予行演習として行うのです。
債権額調査と確定、再生計画案提出
手続き開始決定がされると、裁判所から各債権者に開始決定書が送付され、債権を指定期間以内に届け出るよう促されます。
債権者から届いた債権を基に、債権額調査と確定作業が行われます。
申立書に記載した金額で、債権額は決定することが多いです。
債権額が決定したら、再生計画案を作成します。
弁済額や弁済方法などについて定めた計画書です。
7、再生計画案に対しての意見徴収または書面決議
再生計画案に対し債権者から、同意か不同意か意見を聞きます。
小規模個人再生では、裁判所から各債権者に再生計画案と決議書を送付し、書面決議を行います。
給与所得者等再生では、債権者から意見徴収という形です。
再生計画案に対し不同意の場合のみ、債権者は異議を提出します。
小規模個人再生の場合には、半数以上の債権者から異議があれば、その時点で個人再生手続きは不許可となり、終了です。
再生計画の許可または不許可、および確定
債権者の意見、計画案の履行実現性などをふまえ、裁判所が再生計画案の許可または不許可決定を下します。
許可決定が下れば、その1ヶ月後ぐらいに許可決定が確定します。
再生計画案が確定すれば、計画に沿って、債務者は分割返済していき完済を目指します。
個人再生を行うことにより、3年で完済できた方や住宅などの財産を処分せずに借金を返済できた方などと、債務整理して借金の負担から解放された方がいます。
多額の借金を抱えているなら、個人再生を検討するのも、良いかもしれません。
債務者自身で書類作成や手続きを行えますが、書類の書き方がわからない、どの書類が必要か用意できない、手続きが難しそうだなど、ご自身では行うのが無理だと思うかもしれません。
そのような場合は、弁護士に依頼し、代理で個人再生を行ってもらうのがおすすめです。
債務整理に強い弁護士や司法書士であれば、個人再生のアドバイスから手続きまで、債務者をサポートしてくれます。
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