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3社に聞いたら、3つとも違った人へ

同じ家を見てもらったのに、返ってきた数字がそろわない。

いちばん高いところと低いところで、けっこうな差がある。

ここにたどり着く人は、だいたいその状態だと思います。

先に結論です。

査定額に差が出るのは普通のことで、大事なのは差そのものより説明のほうです。

読み終わると、どれを信じるかではなく、何を確かめるかが決まります。

白状すると、私は数字が3つ並ぶと、反射でいちばん高いものに丸をつけたくなる。

たぶん、これが最初の落とし穴です。

査定額は「値段」ではなく「見込み」です

ここが出発点になります。

公益財団法人不動産流通推進センターの案内を見ます。

価格査定は、売り出し価格を決めるときなどの参考情報として使われるもの。

取引事例などの客観的なデータを用いた合理的な手法で行われる、とされています(2026年8月7日に確認)。

つまり査定額は、値札ではありません。

「このくらいで売れそうだ」という見込みの提示です。

見込みである以上、材料と組み立て方が違えば答えも変わる。

ただし、根拠なく出していいものでもありません。

宅地建物取引業者は、価額や評価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならない。

宅地建物取引業法第34条の2第2項に、そう定められています(2026年8月7日に確認)。

価格の出し方が、そもそも複数ある

差が出る1つめの理由が、これです。

不動産の価格を求める手法は、大きく3つに分かれます。

国土交通省が定める不動産鑑定評価基準では、次のように整理されています(2026年8月7日に確認)。

  • 原価法=いま同じものを建て直すといくらかに着目して価格を求める方法/積算価格を出す
  • 取引事例比較法=似た不動産の取引事例に着目して価格を求める方法/比準価格を出す
  • 収益還元法=その不動産が将来生む収益に着目して価格を求める方法/収益価格を出す

この3手法は、不動産鑑定士が行う鑑定評価の基準です。

不動産会社が売買のために行う価格査定は、これとは別の実務になります。

実務側の代表が、不動産流通推進センターの「価格査定マニュアル」。

宅地建物取引業法第34条の2にもとづく根拠の明確化のために作られたものです。

戸建住宅は原価法、マンションと住宅地は事例比較法を採用しています(2026年8月7日に確認)。

戸建てとマンションで、そもそも組み立てが違う。

ここを押さえていないと、数字の差が全部「会社の姿勢の差」に見えてしまいます。

同じ手法でも、入れる材料が違えば答えが変わる

2つめの理由は、材料です。

取引事例比較法なら、どの事例を似ていると見るかで結果が動きます。

同じマンションの別階を採るのか、隣の街区の似た築年を採るのか。

その選び方に、会社ごとの経験が入ります。

渡した情報の量でも、答えは動く。

不動産流通推進センターの案内は、前提条件が違うと査定価格は比較できないと述べています。

だから、どの会社にも同じ物件情報を提供することが重要だ、と。

物件の不具合の情報も、できるだけ提供したほうが正確になるとされています。

つまりA社にだけ雨漏りの話をしていたら、その時点で比較は成立していない。

差の一部は、こちらが作っていることがあります。

渡す材料を、そろえる。

査定額・売出価格・成約価格は、別の3つの数字

ここが混ざると、あとで必ずずれます。

  • 査定額=売り出し価格を決めるための参考情報/会社が出す見込み
  • 売出価格=実際に市場へ出すときに、売主が決める価格
  • 成約価格=買主が現れて、契約が成立した価格

成約価格は、査定額を下回ることも上回ることもあります。

売り出してみないと分からない部分が、どうしても残るからです。

その成約価格の傾向は、自分でも見に行けます。

指定流通機構(レインズ)が、実際に売買された物件の価格を検索できるサイトを公開しているからです。

消費者が相場観をつかめるように整えられたものです(2026年8月7日に確認)。

高い査定額が、良い査定額とは限らない

これは私の意見ではなく、公的な案内に書かれていることです。

不動産流通推進センターの案内を、そのまま引きます。

複数社に査定を依頼すると価格に差が生じることがあるが、高い査定価格を提示したところが良い不動産会社というわけではない。

仲介の依頼を受けたいがために、あえて高い査定価格を提示する会社も存在する(2026年8月7日に確認)。

後悔の例も、挙げられています。

高すぎる売り出し価格を設定したために、売却できなかった。

逆に低すぎて、売却価格に不満が残った。

だから査定価格の裏づけを確認することが重要だ、という結びになっています。

私は数字を見ると、まず検算したくなるほうです。

不動産の利回りでも、表面の数字は実質だとおおむね半分になります。

表面7%なら、実質3.5%くらい。

そこを飛ばすと、あとで月々が回りません。

……と書いておいて何ですが、高い数字を見て嬉しくならない人はいない。

だから最初に、嬉しくなる用の数字と判断に使う数字を分けておくのが早いです。

差が出たときに確かめる3つのこと

やることは、多くありません。

  1. 根拠の説明を聞く/どの事例を使い、どこを加点・減点したのか(あいまいだと感じたら、納得できるまで説明を求めていい)
  2. 全社に同じ情報を渡したかを確認する/渡した資料と伝えた不具合が違えば、比較は成立していない
  3. 成約価格の傾向と突き合わせる/売り出し中の価格ではなく、実際に成立した価格を見る

この3つを踏むと、数字の大小ではなく説明の質で会社を見られるようになります。

ここで、順番の話を1つ足します。

2つめを読み返してほしいのですが、比べるには全社へ同じ材料を渡す下ごしらえが要ります。

これが済んでいないと、数字はそろっても比較にはなりません。

だから先に1社だけで数字を1つ持ち、比べるのはそのあとにする、という入り方もあります。

頼み先の形も、複数社へまとめて渡す形、1社で完結する形、相続の手続きを相談する窓口の3つに分かれる。

どちらが良いという話ではなく、目的が違うだけです。

そして説明の質は、査定の種類によっても変わります。

データだけの査定と現地を見る査定を比べると、どちらの段階で根拠を詰めるべきかが分かります。

頼み先の並べ方も、そちらにまとめました。

この記事を書いている私について

私は1974年生まれの団塊ジュニアです。

人材会社をやりながら、自分でも転職を5回、6社を渡り歩いてきました。

資格があるから書いているわけでは、ありません。

不動産については、売る側ではなく借りて持つ側で数字を触ってきました。

そこで確かめてきたのは、ほぼ1つ。

月々のキャッシュフローがプラスになるか。極論すれば、これだけです。

金利が高くても、利回りが高ければいい。

利回りが低いなら、金利は安くなければいけない。

その釣り合いを見る癖は、査定額の見方にもそのまま使えます。

大きい数字ではなく、成り立ちを見る。

査定額は、その金額で売れることを約束するものではありません。

制度や実務の運用は変わるので、2026年8月7日時点で確認した内容としてお読みください。

売却益にかかる税金や特例の要件は、物件ごとに違います。

ここでは扱いません。

税務署や税理士に、ご確認ください。

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