友人に「登録だけしてみたら」と言われて開いたものの、料金のページがどこにも見当たらない。それで「看護師 転職サイト なぜ無料 仕組み」と検索した人に向けて書いています。

結論を先に置きます。無料なのは各社の親切心ではなく、法律でそう決まっているからです。そして、いくらのお金がどこからどこへ動いているかは、厚生労働省のサイトで誰でも見られます。

法律の側から見た「無料」

職業安定法32条の3第2項は、有料の職業紹介をする会社が求職者から手数料を取ることを、原則として禁じています

例外的にお金を取れる職業は、あらかじめ限定されています。芸能家とモデル、それに経営管理者・科学技術者・熟練技能者の3つ(この3つは、紹介された仕事の年収が700万円を超える場合に限られます)。厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」に、そのまま書かれています(2026-08-04時点で確認)。

看護師は、この例外のどこにも入っていません。だから「あとから請求書が来る」は起きようがない。無料は各社のキャンペーンではなく、制度の初期設定です。

では、誰がいくら払っているのか

払っているのは、採用する側の病院や施設です。あなたが入職したあとに、紹介した会社へ紹介手数料を支払います。

その金額の決まり方は2通りあります。

方式 内容
上限制 支払われた賃金額の10.8%(消費税の免税事業者は10.3%)が上限。期間の定めのない雇用で6か月を超えて働いた場合は、14.5%(免税事業者は13.8%)まで受け取れる計算方法も選べます
届出制 厚生労働大臣に届け出た手数料表のとおりに受け取る方式

どちらを採っているかは会社によって違います。ここを知っているだけで、見えるものが1つ増えます。紹介する側は、あなたが入職しないと1円も受け取れない。だから無料で使えるし、同時に「早く決めてほしい」という力がうっすら働き続けます。良い面と、そうでない面が同じ1本の線から出てきているわけです。

公開されている数字を、自分の目で見る手順

ここからは手順です。所要5分。

  1. 厚生労働省の「人材サービス総合サイト」を開く。
  2. 「職業紹介事業」を選び、都道府県を選ぶ。業界の傾向を見たいときは「全国」を選ぶ。
  3. 詳細検索条件を開き、取扱業務の職種で「023 看護師、准看護師」を選んで検索する。

一覧に出てくるのは、次の4つです。

  • 就職者数
  • 無期雇用のうち、就職後6か月以内に離職した人数
  • 紹介手数料の実績(手数料実績率)
  • 返戻金制度の有無・内容(早期に退職した場合、手数料の一部が採用側へ戻る仕組みがあるか)

これが見られるのは、職業紹介事業者に情報提供が義務づけられているからです。さらに職業安定法施行規則の改正により、2025年(令和7年)4月1日以降は、職種ごとの平均手数料率などの実績を掲載することも義務になりました。ただし取扱いの上位5職種に限られ、常用就職の紹介実績が10件以下の場合は掲載対象外です(2026-08-04時点の厚生労働省リーフレットで確認)。

数字に「この値なら安心」という正解はありません。同じ都道府県の他社と並べて、どのあたりにいるかを見れば足ります。

「無料」の副作用を打ち消すために置かれているルール

入職しないとお金が動かない仕組みには、当然ながら副作用があります。だから、そこにルールが後付けされています。3つだけ知っておけば十分です。

  • お祝い金の禁止:2021年(令和3年)4月1日から、「就職お祝い金」などの名目で金銭等を渡して求職の申込みをすすめることが禁止されています(職業安定法の指針改正)。
  • 転職勧奨の禁止:同じ改正で、自ら紹介して就職させた人に対し、就職の日から2年間は転職をすすめてはいけないことになりました(期間の定めのない雇用の場合)。
  • 取扱条件の明示義務:職業安定法32条の13により、申込みを受理したあとすみやかに、取扱職種の範囲、手数料に関する事項、苦情処理に関する事項、個人情報の取扱いに関する事項を、書面かメールで明示することが義務づけられています。

3つめは、そのまま使えます。届いていなければ聞けばいい。聞くことが法律で想定されている、という事実だけで、最初のやりとりはずいぶん気楽になります。

もう1つ。医療・介護・保育の分野には、厚生労働省の委託事業として「適正な有料職業紹介事業者の認定制度」があり、認定を受けた会社の一覧が公開されています。

使わない、という選び方もあります

民間の紹介会社を使わなければいけない、ということはありません。公的な無料の職業紹介があります。

都道府県ナースセンターです。1992年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に基づいて、47都道府県に必ず1つ置かれています。運営は各都道府県の看護協会で、無料の職業紹介(ナースバンク事業)と就業相談を行っています。オンライン版の「eナースセンター」もあります。

こちらは紹介手数料が動かないので、「早く決めてほしい」という力が構造的にかかりません。そのぶん求人の数や連絡の速さは民間と性格が違うので、両方に登録して見比べる、というのが現実的です。

私がこの仕組みを気にする理由

私は人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩きました。送り出す側と動く側、両方の景色を見ています。

そこで身についたのは、仕組みの取り分が誰に流れているかを先に見るという癖です。無料と書いてあるものほど、お金は別のところで動いています。悪いことだと言っているのではありません。どこで動いているかを知らないまま乗ると、判断が相手の都合に寄る、というだけの話です。

そして、これは転職の話でもあります。安く買われるシステムに乗ったままでいるか、安く買われないシステムへ乗り換えるか。自分がこれくらいの価値なんだ、というのを自分自身で決めるためには、まず値段のつき方を見るところからです。

……と書いておいて何ですが、私も1社目のときは手数料の話をまったく知りませんでした。知らなくても転職はできます。ただ、知っていたら断り方がもっと早かったな、とは思います。

次に見るもの

仕組みが見えたら、あとは実際の手順です。登録から最初の連絡までに何が起きるか、最初のメッセージに何を書いておくと後が楽かを、登録前に確かめる手順をまとめて読むページに並べてあります。

この記事を書いた人

しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。

本文中の制度・数値は2026-08-04時点で確認したものです。制度は改正されることがあるので、登録の前には厚生労働省の公式ページで必ず確かめてください。