同期が別の病院へ移ったと聞いた日の休憩室で、スマホに「看護師 転職 サイト 使い方 初めて」と打ち込んだ。そこで手が止まっている人に向けて書いています。
結論を先に置きます。登録ボタンを押す前にやることは、たった1つです。厚生労働省が運営する「人材サービス総合サイト」で、その会社の数字を自分の目で見ておく。ここに5分使うだけで、このあとの流れがまるごと軽くなります。理由は下に全部書きます。
「登録したらお金を取られる」は、法律のほうで先に片づいています
いちばん多い引っかかりから片づけます。看護師が転職サイトに登録して、こちら側が手数料を払うことは、原則としてありません。これは各社のサービス方針ではなく、職業安定法という法律で決まっている話です。
職業安定法32条の3第2項は、有料の職業紹介をする会社が求職者から手数料を取ることを原則として禁じています。例外的にお金を取れる職業は限定されていて、芸能家とモデル、それに経営管理者・科学技術者・熟練技能者(この3つは紹介された仕事の年収が700万円を超える場合だけ)に限られます。厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」に、そのまま書いてあります(2026-08-04時点で確認)。
看護師は、この例外のどこにも入っていません。つまり「あとから請求書が来る」は、仕組みのうえで起きないようになっています。
ここが、いちばん気になるところの答えです。
じゃあ、誰がいくら払っているのか
払っているのは、採用する側の病院や施設です。あなたが入職したあとに、紹介した会社へ紹介手数料を支払います。
金額の決まり方は2通りあります。1つは「上限制」で、支払われた賃金額の10.8%(消費税の免税事業者は10.3%)が上限。期間の定めのない雇用で6か月を超えて働いた場合は、14.5%(免税事業者は13.8%)まで受け取れる計算方法も選べます。もう1つは「届出制」で、厚生労働大臣に届け出た手数料表のとおりに受け取る方式です。どちらを採っているかは会社によって違います。
私はここを、けっこう大事なところだと思っています。人材紹介会社の社長をやっていたので、内側の景色を見てきました。紹介する側は、あなたが入職しないと1円も受け取れません。これは良い面と、そうでない面の両方を同時に作ります。良い面は、あなたが無料で使えること。そうでない面は、「早く決めてほしい」という力がうっすら働き続けることです。
どちらに転んでも自分が損をしないように、お金の流れだけは先に見ておく。これは転職に限らず、世の中のたいていの「無料」に効く見方です。
手数料の種類と、公開されているデータの読み方をもう少し丁寧に知りたい人向けに、転職サイトが無料で使える仕組みを確かめるページを別に用意してあります。
登録の前に見る、公的サイトの3つの数字
ここからは手順です。所要は5分ほど。
- 厚生労働省の「人材サービス総合サイト」を開く。
- 「職業紹介事業」を選び、都道府県を選ぶ。全国の傾向を見たいときは「全国」を選ぶ。
- 詳細検索条件を開き、取扱業務の職種で「023 看護師、准看護師」を選んで検索する。
出てきた一覧で見るのは、次の3つです。
| 見る数字 | 何が分かるか |
|---|---|
| 手数料実績率 | 看護師の紹介で、実際に何%を受け取っているか |
| 就職後6か月以内の離職者数(無期雇用) | 紹介した人が、半年のあいだにどれだけ職場を離れているか |
| 返戻金制度の有無・内容 | 早期に退職した場合、手数料の一部が採用側へ戻る仕組みがあるか |
この3つが誰でも見られるのは、職業紹介事業者に情報提供が義務づけられているからです。さらに職業安定法施行規則の改正で、2025年(令和7年)4月1日以降は、職種ごとの平均手数料率などの実績を載せることも義務になりました。ただし取扱いの上位5職種に限られ、常用就職の紹介実績が10件以下の場合は掲載の対象外です(2026-08-04時点の厚生労働省リーフレットで確認)。
数字そのものに「この値なら安心」という正解はありません。見るのは、同じ都道府県の他社と並べたときに、その会社がどのあたりにいるかだけで足ります。
もう1つ。医療・介護・保育の分野には、厚生労働省の委託事業として「適正な有料職業紹介事業者の認定制度」があり、認定を受けた会社の一覧が公開されています。ここも一度見ておくと、判断材料が1つ増えます。
登録してから、実際には何が起きるのか
- 登録フォームの送信:資格・経験年数・希望勤務地・希望条件を入力します。5〜10分ほど。
- 最初の連絡:電話またはメールで届きます。早ければ当日、多くは数日以内です。
- 取扱条件の明示:職業安定法32条の13により、申込みを受理したあとすみやかに、(1) 取扱職種の範囲 (2) 手数料に関する事項 (3) 苦情処理に関する事項 (4) 個人情報の取扱いに関する事項 を、書面かメールで明示することが義務づけられています。届かないときは聞いて構いません。
- ヒアリング:希望条件のすり合わせです。電話かオンラインで30〜60分が目安。
- 求人の紹介:条件に合う求人が示されます。
- 応募・面接・条件提示:応募するかどうかは、毎回こちらが決めます。
詰まりやすいのは2番です。連絡の手段と時間帯を先に決めておかないと、日勤明けで寝ている時間に電話が鳴ります。
最初のメッセージに、この4行を入れておく
登録直後の返信、あるいは登録フォームの備考欄に、次の4行を置いておくと後がずいぶん楽になります。
- 連絡は原則メールでお願いします(電話は◯曜の◯時〜◯時なら可能です)。
- いま在職中で、退職日は未定です。
- 譲れない条件は◯◯です(例:日勤のみ、通勤60分以内など)。
- 条件が合わないときは、その旨をお伝えします。
地味に効くのは4行目です。断ってよい前提を最初に置いておくと、実際に断るときのしんどさが下がります。
ここまでが、誰にでも共通する話です。あとは「自分の条件だと、どの求人がどう出てくるか」という自分側の話しか残っていません。先に登録だけ済ませておくと、条件のすり合わせが1回の面談で終わります。看護の求人をまとめて見るつもりなら、レバウェル看護に登録する前に確かめておく点を読んでから進めると、初回の連絡でつまずきません。
看護の外まで見ておきたい人だけ、もう1つ
病院や施設の中で次を決めると思っている人は、ここは見送って構いません。そのほうが早く決まります。
一方で、治験関連、産業保健、医療機器メーカーなど、看護師資格が効く看護以外の仕事も一度は見ておきたい、という人もいます。その場合は、看護専門ではない総合型の求人も並べて見ることになります。リクナビNEXTで看護以外の求人も見る手順に、登録から検索条件の絞り方までを置いてあります。
「転職サイトを使わない」という選び方もあります
全員が民間の紹介会社を使わなければいけない、ということはありません。公的な無料の職業紹介があります。
都道府県ナースセンターです。1992年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に基づいて、47都道府県に必ず1つ置かれています。運営しているのは各都道府県の看護協会で、無料の職業紹介(ナースバンク事業)と就業相談を行っています。インターネット上から登録・検索・紹介依頼ができる「eナースセンター」もあります。
紹介手数料が動かない仕組みなので、「早く決めてほしい」という力が構造的にかかりません。そのぶん、求人の数や連絡の速さは民間と性格が違います。両方に登録して、出てくる求人を見比べる、というのが現実的な使い方です。
知っておくと得な、2つのルール
一つめ。「就職お祝い金」などの名目で金銭を渡して登録をすすめることは、2021年(令和3年)4月1日から禁止されています。職業安定法の指針が改正されたためです。お祝い金の有無で比べる、という選び方は、そもそも成り立たなくなりました。
二つめ。同じ改正で、自ら紹介して就職させた人に対して、就職の日から2年間は転職をすすめてはいけないことも決まりました(期間の定めのない雇用の場合)。入職後に「次もありますよ」と誘われる形は、ルールの外側にあります。
つまずきやすいところ
- 求人票と労働条件通知書は別物です。最終的に効くのは後者。2024年4月から、就業場所と業務の「変更の範囲」まで明示することが義務になりました(労働基準法施行規則5条の改正)。日勤のみで入るつもりなら、ここを読みます。
- 複数社に登録すると、同じ求人が別々の会社から届くことがあります。先に応募したほうが優先されるのが通例なので、応募した求人はメモに残しておきます。
- いつ動くかを決めていないと、話が進みません。年度途中でもよいのか、次の年度末まで待つのか。年度途中に動くかどうかの判断材料を確かめるほうで、賞与と有給休暇の逆算まで書いています。
- 夜勤の有無は、探し方の順番で結果が変わります。条件から絞る手順は夜勤なしの求人を条件から絞る探し方を見るにまとめました。
- 退職の切り出しは、活動そのものより先に悩む人が多いところです。順番と言い方は退職を伝える順番と引き止めへの返し方を読むで扱っています。
私が5回やって、いちばん効いたこと
私は転職活動を5回して、6社を渡り歩きました。零細もブラックも大手も、グローバルメーカーも通っています。その5回でいちばん効いたのは、スキルアップではありませんでした。場所を変えたことです。
安く買われるシステムに乗っかっていたのを、安く買われないシステムに乗り換えた。それだけで、同じ自分が高く売れるようになりました。順番が逆なんです。腕を上げてから移るのではなく、自分の値段を自分で決められる場所に、先に立つ。
……と書いておいて何ですが、これ、1回目はまったくうまくいきませんでした。自分の条件を自分の言葉で言えなかったからです。転職サイトの使い方でいちばん大事なのは、実は検索条件でも面接対策でもなく、「譲れないのはこれです」と最初に言えるかどうかだったりします。
他の選択肢も並べて見たい人へ
働き方だけでなく、固定費や手取りの側から見直したほうが早い場面もあります。入口をまとめてあるので、お金の入口をまとめたページで他の選択肢を見ると、比べる材料が増えます。
この記事を書いた人
しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。送り出す側と、動く側の両方を見てきています。
ここに書いたのは、公的機関が公開している情報と、自分が実際に通った範囲だけです。本文中の制度・数値は2026-08-04時点で確認したものなので、申し込みの前には公式の記載で必ず確かめてください。
