在職中の転職活動で気をつけるのは、行動より「痕跡」です

求人サイトに登録しようとして、会社のパソコンの前で手が止まった。あるいは、社用のアドレスに求人のメールが届いてひやっとした。そこから検索した人向けです。

結論を先に書きます。在職中に転職活動をすること自体は、法律で禁じられているものではありません。ただ、社内に伝わるときは本人の行動ではなく痕跡から伝わります。痕跡の出どころは(1)端末と回線 (2)連絡先 (3)勤怠と服装 (4)自分の口の4か所しかないので、そこを順に片づければ、伝えるタイミングは自分で選べます。

そもそも、隠すのは後ろめたいからではありません

先に前提を整理しておきます。在職中に次の職場を探すのは、労働者が普通にやっていいことです。それでも情報の出方に気をつけるのは、こういう理由です。

  • 決まっていない話が先に広がると、事実と違う形で伝わる。まだ応募もしていない段階で「辞めるらしい」が回ると、話がややこしくなります
  • 引き継ぎの計画を先に立てたい。伝える順番と時期を自分で決められるほうが、最後まできれいに終われます
  • 途中でやめる自由を残しておきたい。外を見た結果、いまの会社に残る判断をすることは普通にあります

つまり、目的は隠しきることではなく、自分のタイミングで話せる状態を保つことです。この置き方をしておくと、あとで伝えるときの気持ちがずいぶん楽になります。

片づける順番は4つだけ

1|端末と回線

  1. 会社から貸与された端末では、求人サイトを見ない・書類を作らない・保存しない
  2. 社内のWi-Fiや社内ネットワークにつないだ私物端末でも、業務外の閲覧が記録される場合があります。会社の情報管理の規定を一度読んでおいてください
  3. 書類は私物の端末か、私用アカウントのクラウドに置く。会社のアカウントで同期しない

2|連絡先

  1. 登録に使うメールアドレスは私用のものを新しく1つ用意する
  2. 電話は私用の番号だけを登録する。折り返しの時間帯を先に伝えておくと、日中に着信が続く事態を減らせます
  3. 共有のカレンダーに、予定の中身が見える形で面接を入れない

3|勤怠と服装

  1. 面接は、可能ならオンラインか、始業前・終業後の時間帯を相談する
  2. 半休や有給を使う場合、取得の理由を細かく説明しない。有給の理由を会社に申告する義務はありません
  3. 普段と違う服装で出社しない。着替える場所を先に決めておくほうが早いです

4|自分の口

  1. 同僚に相談しない。悪意がなくても、話は伝わります
  2. SNSの公開範囲を確認する。職務経歴を公開設定にしているサービスがないか見ておく
  3. 取引先や社外の知人にも、決まるまでは言わない

この4つのうち、実際に多いのは1と4です。仕組みで防げるのが1、気をつけるしかないのが4。先に1を潰しておくと、4で気を張る量が減ります。

それでも伝わってしまったとき

ごまかそうとすると、たいてい話が大きくなります。伝わってしまったら、隠さずに、いまの状況だけを事実で話すのが結局いちばん早いです。「考えている段階で、まだ何も決まっていません」で足ります。

そして、ここは大事なところなのですが、転職活動をしていたことを理由に不利益な扱いを受けるのは、正当なことではありません。 実際にそういう扱いを受けたら、社内で抱えずに、各都道府県労働局の総合労働相談コーナーのような公的な窓口に相談してください(2026-08-04時点。窓口の案内は公式でご確認ください)。

この進め方が向かない人

  • もう辞めると決めていて、時期も決まっている。この場合は痕跡を消すより、引き継ぎの段取りを先に組むほうが得です
  • 社内公募や社内異動を先に考えている。社内異動は隠す話ではなく、上司に相談する話です
  • いま体調を崩している。活動より先に休むことをおすすめします

私の場合はこうでした

私は転職活動を5回やって、6社を渡り歩きました。人材紹介会社の社長もやっていたので、両側から見ています。

送り出す側にいて分かったのは、会社に伝わるきっかけの多くが、本人が誰かに言ったことだという身も蓋もない事実でした。端末の履歴で見つかるより、「実は……」と話した相手から回るほうがずっと多い。だから私は、決まるまでは社内の誰にも言わないことにしています。

……と書いておいて何ですが、黙って進めるのはそれなりにしんどいです。だから相談相手は、社外に1つ確保しておくほうがいい。求人を持っていて日程調整もやってくれる相手なら、話し相手と実務を兼ねられます。その置き方も含めて、動き出しの順番は辞めずに動くときの準備の順番を確認するほうにまとめてあります。

この記事を書いている人

しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。零細もブラックも大手も、グローバルメーカーもいます。

私は労務や法律の資格を持っているわけではありません。ここに書いたのは実務の段取りであって、法的な判断ではありません。就業規則や情報管理の規定は勤務先のものが正であり、トラブルが起きている場合は公的な相談窓口をご利用ください。