求人票を開くと、給与欄が2種類に分かれていることがあります。
片方は「月給25万円〜」、もう片方は「歩合制・上限なし」。
同じタクシーの仕事なのに、数字の見え方がまるで違います。
「上限なし」という言葉は、財布の中身とは関係なく、気持ちだけを先に大きくしてくれます。
そのまま比べると、読み違えやすいところです。
この記事では、歩合給の計算の仕組みと、固定給との比べ方を書きます。
特定の会社の歩合率は書きません。
厚生労働省の案内で確かめた範囲だけを使います。
会社を見比べるところから始めたい方は、ドライバー・タクシーの転職サイトを比べたページが先に役立ちます。
求人票の給与欄は、3つの形に分かれます
タクシーの給与は、大きく分けると3つの形です。
- 固定給だけ(毎月、決まった額が出る)
- 歩合給だけ(運賃収入に応じて額が変わる)
- 固定給と歩合給の組み合わせ
同じ「歩合」と書いてあっても、何に歩合率を掛けるかは会社ごとに違います。
固定給の額と歩合の割合は、別々に読むものです。
固定給は、毎月同じ顔で振り込まれます。
歩合給のほうは、毎月違う顔で届きます。
どちらの顔と付き合うかを決める話だと思うと、少し読みやすくなるはずです。
歩合給の計算は、運賃収入に歩合率を掛けるところから始まります
歩合給の基本の形は、運賃収入に歩合率を掛ける計算です。
運賃収入は、現場では営収と呼ばれています。
次の表の数字は、計算を練習するために作った仮のものです。
実際の会社の条件ではありません。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| ひと月の運賃収入 | 60万円 |
| 歩合率 | 50% |
| 歩合給 | 60万円×50%=30万円 |
実際の求人では、ここに前提がつきます。
掛ける前に何かを引くのか、一定の額に届かない月はどう扱うのか。
そうした決まりは、会社ごとの賃金規程に書かれています。
求人票の歩合率だけを見て、月の手取りを割り出すことはできません。
歩合率は、計算の入り口にすぎないからです。
歩合でも固定給でも、法律が決めている最低ラインがあります
歩合給は、労働基準法の27条にある「出来高払制」にあたります。
厚生労働省の案内では、働いた時間に応じた一定額の賃金の保障を、会社が用意することになっています。
成績が出なかった月でも、働いた分の最低限は守る、という考え方です。
保障給の額は、法律には書かれていません。
タクシーなどの運転者については、通達で、固定給と合わせて通常の賃金の6割以上が保障されるように定めることが示されています。
保障給の定めがない場合も違反、というのが厚生労働省の案内です。
もうひとつ、タクシーでよく出てくる仕組みがあります。
売上が上がるほど歩合率が上がる、累進歩合です。
厚生労働省は、トップ賞や奨励加給を含めて、この仕組みの廃止を求めています。
求人票に「売上に応じて率がアップ」とあれば、賃金規程でどう定めているかを確かめる手がかりになります。
ただし、この記事は特定の会社が違反しているかを判断するものではありません。
気になる点は、労基署の窓口に相談できます。
どっちが得か比べるときは、1時間あたりの額に直します
固定給と歩合給を比べるときは、1時間あたりの額に直すのがいちばん簡単です。
厚生労働省が最低賃金の確認方法として示している計算が、そのまま使えます。
考え方は2つです。
固定給の部分は、決まった所定の労働時間で割ります。
歩合給の部分は、その歩合給を得るために働いた月の総労働時間で割ります。
割増賃金(時間外・深夜)は、この計算に入れません。
厚生労働省の計算例を並べると、次の表のとおりです。
| 見るところ | 固定給と歩合給の併給 | 完全歩合 |
|---|---|---|
| 固定給 | 136,000円÷170時間=800円 | なし |
| 歩合給 | 50,000円÷200時間=250円 | 168,000円÷200時間=840円 |
| 1時間あたりの合計 | 1,050円 | 840円 |
| 最低賃金950円との比較 | 上回る | 下回る |
この例では、最低賃金が時間額950円と置かれています。
これは例の数字です。県ごとの最新の最低賃金は、労働局の案内でご確認ください。
この表は、最低賃金を下回っていないかを調べる例です。
2つの働き方の損得を比べるものではありません。
求人票の月額を時間あたりに直すときの、計算の手順として使ってください。
手順は、次のとおりです。
- 月の支給額から、割増賃金や通勤手当などを除く
- 固定給は所定の労働時間で、歩合給は月の総労働時間で割る
- 2つの額を足して、1時間あたりの額にする
求人票と面接で、聞いておくこと
給与欄の数字だけでは、歩合の計算は分かりません。
応募の前に聞いておくのは、次の4つです。
次の文は、そのまま読み上げても、書き写してもかまいません。
給与の仕組みについて、4点を教えてください。
1. 歩合率は、何に掛けますか。引かれる項目があれば、教えてください。
2. 固定給の額と、保障給の定めを教えてください。
3. 歩合が出にくい月は、どのように支払われますか。
4. 賃金規程は、書面でいただけるでしょうか。
口頭の説明だけだと、あとで食い違ったときに確かめようがありません。
書面で出せない会社なら、それ自体が判断材料の一つです。
入社祝い金の条件も、同じように書面で確かめられます。
どちらが向くかは、毎月の見通しで決めます
固定給の割合が大きい形は、毎月の入金が読みやすくなります。
家賃やローン、教育費のように、支払う日と額が決まっている出費が多い人向けです。
歩合給の割合が大きい形は、月ごとの入金がぶれやすくなります。
ぶれた月があっても生活が崩れない貯えがあるか、が分かれ目です。
どちらが得かは、働く地域や時間帯、会社の仕組みで変わります。
この記事では、結論を出しません。
決めるのは、ご自身の毎月の支払いと貯えです。
毎月の見通しを立ててから動く方は、タクシーの求人窓口を比べたページで、1社だけ先に見ておく手もあります。
登録するかどうかは、窓口の中身を見てから決められます。
しばおが、仕組みの話に絞って書いた理由
しばお
1974年生まれの団塊ジュニアです。
かつて人材会社をやっていて、自分でも5回転職して6社を渡り歩きました。
タクシーを運転した経験はありません。
だから、現場の話は書かず、給与の仕組みと比べ方に絞りました。
労務や法律の資格も、持っていません。
法律の部分は、厚生労働省の案内を自分で読んで確かめました。
運営者の経歴は運営者プロフィールのページで確認できます。
給与の形を見比べたら、次は求人の探し方です。
探し方は、タクシーの求人を比べて選ぶページで確かめられます。
賃金の仕組みや条件は、会社や年度によって変わることがあります。
申し込む前に、募集要項と賃金規程の最新の表示をご確認ください。



