転職先の求人票を開くと、年収の欄に、いまより低い数字が見えます。
40代で動くと年収は下がるのか。
統計と求人票の読み方から、判断の足場を作る記事です。
「最大50%オフ」の札を見ると、つい最大のほうを信じてしまいます。
求人票の年収欄も、書き方がそっくりです。
違うのは、私が小さいほうの数字から読むようになったことです。
窓口ごとの違いを先に知りたい方は、薬剤師の相談先を困りごと別に選ぶが先に役立ちます。
転職した40代の約7割は、年収が増えたか変わらなかった
この記事は、40代から50代の薬剤師を想定して書いています。
いちばん確かな足場は、厚生労働省の「雇用動向」の調査です。
2024年の結果に、転職した人が前の職場と比べて、賃金がどう動いたかの表があります。
| 年齢 | 増加 | 変わらない | 減少 | うち1割以上の減少 |
|---|---|---|---|---|
| 40〜44歳 | 45.9% | 23.7% | 29.0% | 21.2% |
| 45〜49歳 | 46.4% | 26.9% | 23.8% | 16.5% |
| 50〜54歳 | 39.0% | 31.7% | 28.2% | 21.0% |
| 全年齢 | 40.5% | 28.4% | 29.4% | 21.7% |
転職した人が、前の職場と比べた賃金の動きです。
厚生労働省の2024年の調査から、40代と50代前半を抜き出しました。
ざっくり言うと、約7割は増えたか変わらなかったことになります。
足すと、40〜44歳で69.6%、45〜49歳で73.3%です。
この足し算は、私が表の数字で行いました。
一方で、減った人も3割近くいます。
1割以上減った人は、40〜44歳で21.2%。
下がる人は、確かにいます。
ただし、多数派ではありません。
それが、この表の読み方です。
注意点は2つ。
1つめは、全職種の転職者の集計だということ。
薬剤師だけの公的な数字は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。
2つめは、金額ではなく、前の職場と比べた変化の割合だということです。
薬剤師の転職活動の不安でも、年収ダウンは上位に入ります。
リクルートメディカルキャリアが公表した調査があり、対象は薬剤師向けアプリ「ヤクチエ」の登録者655人です。
2024年3月の調査で、「年収ダウン」を挙げた人は51.5%でした。
1位は、希望の勤務条件で働ける仕事が見つかるかどうかで、56.8%です。
薬剤師全体の年収は、40代で下がっていない
年齢が上がると年収が落ちるなら、年齢別の数字は右下がりになるはずです。
ところが、薬剤師の年齢別の年収は、40代から50代前半にかけて上がっています。
数字を載せているのは、マイナビ薬剤師です。
厚生労働省が2024年にまとめた賃金の統計をもとに、毎月の基本の給与を12倍して、年間の賞与などを足した金額。
残業手当は入っていない。
40〜44歳は約616万円、45〜49歳は約643万円、50〜54歳は約716万円。
私が使ったのは、サイトの数字です。
厚生労働省の元の表ではなく、この計算を載せたページから読みました。
掲載の月給と賞与から掛け算と足し算をやり直すと、金額はぴったり合いました。
この数字は、転職した人だけの平均ではありません。
働き続けている人も含めた、薬剤師全体の平均だ。
年齢のせいで下がる、という読み方は、少なくともこの平均からは出てきません。
年収の数字は、集めた相手によって大きく変わります。
転職エージェントのJACリクルートメントは、40代の薬剤師の平均年収を992.7万円と載せています。
これは同社が転職を支援した人の事例の平均です。
私が読んだページには、人数と集計期間が書かれていませんでした。
公的な統計と並べて同じ「40代の薬剤師の年収」として読むと、見誤ります。
数字をそろえて比べると、下がるかどうかが見えてくる
転職前の年収を思い出すとき、人はたいてい額面で考えます。
けれども、買い物の支払いに使えるのは手取りのほうで、スーパーのレジは額面を一度も聞いてくれません。
比べるなら、同じ種類の数字どうしにそろえるのが先。
求人票の年収は、次の3つに分けて見ます。
- 基本給が、固定残業代を除いた額か
- 賞与と手当が、いまの職場と同じ中身か
- 月の想定残業が、何時間分含まれているか
固定残業代は、厚生労働省のリーフレットで、書き方が決められています。
基本給は、固定残業代を除いた額で書く。
何時間分でいくらかも示す。
その時間を超えた分は、割増賃金を追加で払うと書きます。
この3点がそろっていない年収欄は、数字をそのまま比べないほうが安全です。
年収欄が「450万〜600万円」のように幅で書かれているときは、私は小さいほうを本当の数字として読みます。
大きいほうは、条件がそろったときの数字だと考えるからです。
かつて人材会社をやっていた頃に身についた読み方で、全部の求人に当てはまる決まりではありません。
では、幅の中のどこに決まるのか。
面談で確かめます。
同じリーフレットには、変更の明示が必要になる例が載っています。
当初の明示が「基本給25万〜30万円」で、のちに28万円と示した場合も、その対象です。
決まった額は、書面で受け取りたいところ。
比べてから決めたい方へ
ほかの相談先も候補に入れたい方向けです。
いまの手当が、転職先でも付くかを1つずつ聞く
いまの給与明細を開いて、管理薬剤師の手当や残業代など、基本給以外の項目に印をつけます。
1つずつ、転職先でも付くかを面談で聞きます。
付くなら、条件は何かも確かめる。
同じ名前の手当でも、金額の決め方が同じとは限りません。
聞き方は簡単で、面談の終わりに「いまの手当は、こちらでも付きますか」と1つ聞けば足ります。
聞く相手を決めるなら、窓口ごとの得意不得意を見比べるところから始めると早いです。
下がる額を、10年ぶんの数字にして考える
たとえば、転職で年収が30万円下がるとします。
賞与込みの差が毎年変わらず、昇給も考えない単純な計算なら、10年で300万円の差。
この前提で数えたうえで、その差と引き換えに何が手に入るかを、同じ紙に書き出します。
- 月の勤務時間と残業時間
- 通勤にかかる時間
- 休みの取りやすさ
- この先も働き続けられるかの見通し
退職金は、この計算に入れていません。
制度の有無も、対象になる勤続年数も、会社ごとに違うからです。
求人票と労働条件の通知書で制度の有無を確かめ、金額の見込みは窓口に聞いてください。
下がるかどうかを、戻れる形で試す
年収が下がるのが怖いときは、いまの職場を辞めずに、外を1日だけ見る手があります。
薬剤師には、単発の派遣で1日だけ働く方法があります。
外の時給と働き方の違いを、実際の数字で見られる。
合わなければ戻れる形なので、決める前の材料として軽く試せます。
私は、戻れる範囲のことは先に試すほうを選びます。
試さずに決めたことのほうが、あとで高くつくと思っているからです。
しばおが年収の話を書ける理由
私は薬剤師ではありません。
かつて人材会社をやっていて、自分でも転職を5回、6社を渡り歩いてきました。
年収欄の幅の読み方や、条件を書面で確かめる習慣は、職種が違っても通じると考えて書いています。
薬局の現場や、薬剤師の細かい待遇は、公的な統計と各窓口の説明を読み比べた範囲にとどまる。
実際の条件は、求人ごとに違う。
どの窓口に相談するか決める段階なら、どこに相談するかを決める比べ方がそのまま使えます。
薬剤師の資格は持っていません。
運営者の経歴は運営者プロフィールのページで確認できます。
統計の数字や求人の条件は、変わることがあります。
申し込む前に、厚生労働省と各窓口の最新の表示をご確認ください。


