職場で配られた年金の案内を眺めていて、ふと「もし夫に何かあったら、国からいくら出るんだろう」と気になった。そこで検索した人に向けて書いています。
先に結論です。遺族年金は1階と2階に分かれていて、1階は誰でもすぐ計算できます。2階だけは記録を見に行く必要があります。逆に言うと、調べる作業のうち手間がかかるのは半分だけです。読み終わったときに、どこを見に行けばいいかが決まっている状態にします。
1階と2階に分けると、急に見通しが立ちます
遺族年金という1つの制度があるわけではなく、遺族基礎年金と遺族厚生年金という2つの年金の総称です。会社員や公務員として厚生年金に入っている人が亡くなった場合、条件に当てはまれば両方を受け取れます。
- 1階=遺族基礎年金。金額が一律で決まっていて、子の人数で加算がつく。子がいる間だけ
- 2階=遺族厚生年金。亡くなった方の厚生年金の加入期間と報酬で額が変わる
だから「遺族年金はいくら」という問いには、1階はすぐ答えが出て、2階は人によって違うという答えになります。まず1階から片づけます。
1階(遺族基礎年金)は、電卓で終わります
受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までの間にある子(障害等級1級・2級の状態なら20歳未満)を指します。
令和8年度の額は、日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」に次のとおり載っています(2026-08-04確認)。
- 子のある配偶者が受け取るとき:年額847,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は844,900円)
- 子の加算:1人目と2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円
子が2人いる配偶者なら、847,300円に243,800円を2回足す。それだけです。年金額は毎年度改定されるので、金額そのものは動きますが、足し方は変わりません。
そして、ここがいちばん見落とされる点です。この1階は、末子が高校を出る年度で終わります。だから調べるときは年額だけでなく、「年額×これから何年ぶん受け取れるか」まで出しておくと、あとで家計の話につなげやすくなります。
2階(遺族厚生年金)は、記録を見に行く必要があります
2階の額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。報酬比例部分は、加入期間中の報酬の平均と加入月数から計算されます。つまり、勤務先での給与と勤続の長さで変わります。
ここで会社員にとって効いてくるのが、300か月みなしという扱いです。厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった場合など、一定の要件に当たるときは、加入期間が300か月(25年)に満たなくても300か月として計算されます。若い世代ほど実際の加入月数は短いので、この扱いがあるかないかで額がまるで変わります。
もう1つ、受け取れる遺族には優先順位があります。配偶者と子がいちばん上で、次に父母、孫、祖父母の順。最も優先順位の高い方が受け取ります。夫が受け取る場合は、亡くなった当時に55歳以上であることが条件で、受給開始は60歳からです(ただし遺族基礎年金を受給中の場合は、60歳より前でもあわせて受け取れます)。
また、夫を亡くした妻が40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない場合などには、中高齢の寡婦加算として40歳から65歳になるまでの間、年額635,500円が加算されます(令和8年度)。30歳未満で子のない妻の場合は、5年間の有期給付になります。
調べる手順(4ステップ)
- 子の人数と、それぞれの学年を書き出す。ここで1階の額と、受け取れる年数が決まります。紙に書くのがいちばん早いです
- ねんきん定期便か、ねんきんネットで厚生年金の加入記録を見る。2階の出発点になる数字はここにあります
- 定期便の数字をそのまま4分の3にしない。50歳未満の方に届く定期便に載っているのは、これまでの加入実績に応じた額です。300か月みなしが効く場合は、ここからずれます
- 年金事務所か街角の年金相談センターの予約相談で確かめる。2階の正確な額は、記録を見ながらでないと出ません。ねんきんダイヤル(0570-05-1165)でも一般的な問い合わせを受け付けています
ステップ3が、この作業でいちばん間違えやすいところです。ステップ4まで行くと確実ですが、そこまでやらなくても、ステップ1と2で「だいたいの輪郭」は自分でつかめます。
先に確認しておくべき2つの条件
金額の前に、そもそも受け取れるかどうかを決める条件が2つあります。
- 生計維持の関係があったか。亡くなった当時に生計を同一にしていて、原則として年収850万円未満の方が対象です(同居していなくても、仕送りを受けていた、健康保険の被扶養者だった等の場合は認められます)。共働きでも、この基準に当たれば対象から外れるわけではありません
- 保険料の納付要件を満たしているか。亡くなった日の前日において、その月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることが必要です。なお、亡くなった日が令和18年3月末日までにあるときは、65歳未満で、直近1年間に未納がなければ要件を満たすものとされる特例があります
「共働きだから出ないのでは」と思って調べるのをやめてしまう人がいますが、条件は年収850万円という線で引かれています。まずここを確認してからのほうが早いです。
この先、数字が動く予定があります
令和7年の法律改正により、令和10年4月1日以後は、生計を同じくする父または母がいる場合であっても、子が遺族基礎年金の支給を受けることができるようになります(日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」・2026-08-04確認)。このほかにも段階的な変更が予定されているため、実際に手続きをする段階では、そのときの公式の記載で確かめてください。
これは急かす話ではありません。いま調べた数字は、数年後にはもう一度見直すものだ、という前提で持っておいてください、という話です。
調べた数字を、どこで使うか
遺族年金の額は、それ単体では「多い」とも「少ない」とも言えません。使い道は、家計の側と突き合わせることです。出ていくお金からこの額を引いて、差額を見る。その並べ方は、会社員の家庭で必要保障額を計算する手順を確かめるほうに紙1枚の形でまとめてあります。
私自身、この計算を最初にやったときは、遺族厚生年金の300か月みなしを知らないまま進めていました。知ったあとで数字が変わって、結論もそこそこ変わりました。そういう性質のものです。
この記事を書いている人
しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。制度の当事者として、自分の年金記録を何度も見に行った側の人間でもあります。
私は社会保険労務士でも保険の募集人でもありません。ここに書いたのは、日本年金機構が公開している「遺族年金ガイド 令和8年度版」で2026-08-04に確認できた範囲だけです。年金額は毎年度改定され、制度も段階的に変わります。ご自身の受給額は、年金事務所か日本年金機構の公式の記載でご確認ください。
