PR

職場に来た人に「そろそろ見直しの時期ですね」と言われて、家に帰って引き出しを開けてみたら、封筒が何通あるのかも分からなかった。そういうところから始める人に向けて書いています。

先に結論を置きます。見直しは「どれに入り直すか」から始めません。いま自分が何に入っているかを、1枚の紙に並べるところから始めます。ここを飛ばすと、次に誰かと話すときも、相手が用意した紙を見せられて終わります。

「何から」の答えは、順番の話でした

見直しという言葉は大きすぎて、聞いた瞬間に手が止まります。実際にやることは、次の6つを順番に踏むだけです。

  1. いま入っているものを集める
  2. 1枚の紙に並べる
  3. 公的な保障で埋まっている部分を引く
  4. 重なっている部分を探す
  5. 残す・減らす・やめる・そのまま、を仕分ける
  6. 埋まらなかった空欄だけを持って、人に聞く

この順番の要点は、6が最後にあることです。多くの場合、人に聞くところから始まってしまう。そうすると、1から5をその場で相手にやってもらうことになり、出てきた紙が正しいかどうかを自分で判定できません。

順番を逆にするだけです。

その前に、お金がどっちを向いているかを見ておく

私が何かを検討するとき、内容より先に見る癖がついているものがあります。その仕組みの取り分が、誰から誰へ流れているかです。良い悪いの話ではなく、流れの向きが分かっていないと、聞いた話をどう割り引けばいいのかが分からないからです。

保険の相談窓口については、これが金融庁の資料からある程度読み取れます。金融庁「保険会社向けの総合的な監督指針」II-4-2-1には、保険募集人が見込み客の紹介を受ける際の支払手数料について「慎重な対応を行っているか」という着眼点があり、その注記に「高額な紹介料やインセンティブ報酬を払って募集関連行為従事者から見込み客の紹介を受ける場合」という記述が出てきます(2026-08-04時点で確認)。つまり、この業界では紹介の対価としてお金が動くことが前提として監督の対象になっている、ということです。

これは隠されている話ではなく、監督する側が公開している文書に書いてあります。知ったうえで座れば、話の受け取り方が変わります。無料と書かれた窓口のお金の出どころを読むほうに、この構造をもう少し細かく分解して置きました。

手順1・2|集めて、1枚に並べる

ここからは淡々といきます。所要はだいたい、集めるのに30分、並べるのに30分です。

集めるもの(家にあるもの)

  • 保険証券
  • 「契約内容のお知らせ」など、年に1回届く通知
  • 10月ごろに届く保険料控除証明書
  • 預金通帳(またはアプリ)の口座振替の履歴

証券が見当たらなくても止まりません。控除証明書と口座振替の履歴が残っていれば、どこと契約があるかは追えます。むしろ控除証明書と通帳のほうが、証券よりも「いま生きている契約」を素直に示します。証券は、解約済みのものが引き出しに残っていることがあるからです。

並べる紙には、次の6列を作ります。契約ごとに1行です。

  • どこと契約しているか
  • 誰にかかっているか(被保険者)
  • 誰が受け取るか(受取人)
  • いつまで続くか(保険期間)
  • いつまで払うか(払込期間)
  • どういうときにお金が出るか

この6列を埋めるだけで、驚くほど景色が変わります。とくに3列目と4列目は、結婚や離婚、子どもの独立から一度も直していない行が見つかりやすいところです。書類のどこにこの6つが載っているかは、証券のどこに印をつけるか順に見るページに並べてあります。

手順3|公的な保障で、もう埋まっている部分がある

民間の保険は、公的な制度の上に乗る形で設計されています。順番としては、下の段を先に見ます。ここは一次情報の話なので、出どころと確認日を添えます。

医療費(高額療養費制度)
医療機関や薬局の窓口で払う医療費が上限額を超えた場合、超えた分が支給される制度です。上限額は年齢と所得で決まります。厚生労働省のページには、現行制度の例として「70歳未満・年収約370万円〜約770万円の方であれば、医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約8.7万円まで抑えられます」と書かれています(同ページ更新日2026年6月2日/2026-08-04時点で確認)。直近12か月に3か月以上該当すると4か月目から上限がさらに下がる「多数回該当」という仕組みもあります。

ここは動いているところなので、金額を覚えないでください。同ページには、令和8年8月と令和9年8月からの見直しが予定されていることも書かれています(年単位の上限を新設するなど)。覚えるのは金額ではなく、確認先です。自分がどの保険者に入っているか(健康保険組合か、協会けんぽか、市区町村の国民健康保険か)を1回調べておけば、必要なときにそこへ聞けます。

働けなくなったとき(傷病手当金)
会社員などが業務外の病気やけがで働けない期間の給付です。全国健康保険協会(協会けんぽ)のページによると、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月。連続する3日間の待期のあと、4日目以降の休んだ日が対象になります。1日あたりの額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2という計算です(2026-08-04時点で確認)。自営業やフリーランスが加入する国民健康保険には、この給付は基本的にありません。ここが会社員と自営業で最も大きく違う段差です。

亡くなったとき(遺族年金)
日本年金機構によると、遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」が対象で、令和8年4月分からの額は昭和31年4月2日以後生まれの方で847,300円+子の加算額(1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)です(同ページ更新日2026年6月22日/2026-08-04時点で確認)。遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。一定の要件に当たる場合、厚生年金の被保険者期間が300月未満なら300月とみなして計算されます(同ページ更新日2026年4月1日)。

ただし、ここには条件がかなり細かく付きます。たとえば子のない30歳未満の妻は5年間のみ、子のない夫は55歳以上の方に限られ受給開始は60歳から、といった具合です。自分の家がどれに当たるかは、ねんきんネットや年金事務所で確認するのが早いです。

この3つを引き算したうえで、それでも足りない金額をどう埋めるかという話になります。足りない額の出し方そのものは、自分の家の必要保障額を計算してみるほうに手順で置いてあります。

手順4|重なっているところを先に探す

並べた紙を見ると、同じリスクに2回お金を払っている行が出てくることがあります。よくあるのは次の2つです。

ひとつめは、住宅ローンの団体信用生命保険と、死亡保障の重なりです。住宅金融支援機構の団信は、加入者が死亡・所定の身体障害状態になった場合などに、以後の債務の返済が不要になる仕組みです(2026-08-04時点で確認)。つまり住居費のうちローン返済分は、すでにそこで消える設計になっている。家を買う前に入った死亡保障がそのまま残っていると、同じ部分を二重に持っていることがあります。団信と死亡保障の重なりを確かめるページに、どこを見れば重なりが分かるかを書きました。

ふたつめは、損害保険の補償重複です。前掲の監督指針II-4-2-2には「補償重複」という項目があり、複数の損害保険契約で同一の被保険利益について同種の補償が複数存在している状態を指すと定義されています。そして保険会社と募集人に対して、新規契約や更新のときに補償重複となる保険にすでに加入していないかを確認するよう求めています(2026-08-04時点で確認)。確認されるはずのことなので、聞かれなかったら自分から言えばいい、という使い方ができます。

手順5|やめる判断は、いちばん後ろに置く

私はふだん、迷ったら一回変えてみるほうがいいと思っています。電気を乗り換えたら月々の負担が下がった、というような話は、戻せるので試す価値がある。

……と書いておいて何ですが、保険はここが素直に当てはまりません。やめたものは、同じ条件では戻せないことがあるからです。健康状態が変わっていれば、次に入り直すときの条件が変わる。だから「とりあえず解約して考える」は、他の固定費と同じ感覚でやると後戻りしにくい。

順番としては、こうなります。減らす・払い済みにする・そのままにする、を先に検討して、やめるのは最後。そして乗り換えるなら、新しいほうが有効になったことを確認してから、古いほうを止める。前掲の監督指針でも、乗換や転換については顧客に不利益になる可能性があることを説明する体制を整えるよう求めています(2026-08-04時点で確認)。順番の問題として制度側も見ている、ということです。

具体的に何を確認してから止めるかは、解約する前に見ておく項目をそろえるページにまとめました。

急がなくていい人と、日付が決まっている場合

ここまでやってみて、6列がすべて埋まって、公的保障を引いた残りも自分で説明できた人は、今回はどこにも行かなくて構いません。その状態がいちばん強いです。年に1回、通知が届いたときに同じ紙を見返せば足ります。

一方で、日付が事実として決まっている場面もあります。申し込んだばかりの契約についてのクーリング・オフは、保険業法309条により、申込みをした日と、申込みの撤回等に関する事項を書いた書面を受け取った日の、いずれか遅い日から起算して8日という期間が定められています(2026-08-04時点で確認)。2022年5月9日施行の改正で、電子メールなど電磁的記録による申出もできるようになっています。該当する人だけ、日付を数えてください。

逆に言えば、それ以外に急ぐ理由は制度側にはありません。

紙を書いてみて空欄が残った人、たとえば「うちの場合、傷病手当金のあとはどうなるのか」が分からなかった人だけ、空欄が残った人だけ窓口の使い方を見るページを見てください。当てはまらない人は、今回は見送っても何も損しません。

私自身がどうしているか

参考までに、自分の選択を書いておきます。推奨ではなく、条件が違えば答えも変わる前提で読んでください。

私は住宅を買ったときに団信に入っているので、それとは別の生命保険には入っていません。自動車保険はネットで手続きできる安いものにしています。掛け捨て以外の、積み立てのついた月額課金型のものには入っていません。理由は単純で、自分の場合は、公的な保障と団信を引いたあとに残る穴が、そこまで大きくなかったからです。

これは私の条件での話です。自営業の人、子どもが小さい人、共働きでない人は、引き算した残りの形がまったく違います。だから同じ結論にはなりません。結論を真似するのではなく、引き算の順番のほうを真似してもらえたら、この記事は役目を果たしています。

……と書いておいて何ですが、私も1枚の紙を作るまでに何年かかかりました。面倒だからではなく、書き出すと「これ要らなかったな」が出てくるのが少し気まずいからです。気まずさは1回で終わります。

ここまでが、全員に共通する話です

順番、公的保障の引き算、重なりの探し方。ここまでは条件が違っても同じように使えます。

残るのは、自分の勤め先の健康保険が何か、家族の構成がどうか、住宅ローンの団信がどこまでを消してくれるか、といった個別の条件です。ここは記事の側では決められません。1枚の紙を持っていって、自分の条件でどこまで埋まるか確かめるのが、いちばん早い進み方だと思います。

お金まわりの話は保険だけで完結しないので、他のテーマも順番に見たい人はお金まわりの入口をまとめて見ておくページからどうぞ。

この記事を書いた人

しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。投資で短期に溶かした失敗も、そこから中長期に切り替えた立て直しも、両方やっています。

私は保険を扱う登録も資格も持っていません。だからこの記事には、どの会社のどの商品がいいという話も、あなたの保険料がいくらになるかという計算も出てきません。書いたのは、公的な制度の仕組みと、自分の契約を自分で確認する手順と、判断するときの順番だけです。個別の商品の内容は、保険会社または募集人に確認してください。

本文中の制度・数値は2026-08-04時点で厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会・金融庁・住宅金融支援機構の各公式ページで確認したものです。制度は改正されるので、実際に動く前には公式ページで最新の内容を確かめてください。