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職場に来た案内を渡されて「いまの保障で足りていますか」と言われ、その日の夜に家で検索した。そこで手が止まっている人に向けて書いています。

先に結論を置きます。必要な保障を決める作業の中身は、「これから出ていくお金」から「すでに入ってくることが決まっているお金」を引く、それだけです。難しいのは引き算ではなく、引く側に何が入るのかを知らないことのほうです。読み終わったときに、紙1枚に自分の家の数字が並んでいる状態を目指します。

順番を逆にすると、すでに持っている保障をもう一度買うことになります

私が大事だと思っているのは、金額そのものよりも順番です。お金の仕組みに向き合うときは、その仕組みの取り分が誰に流れているのかを先に見ておくと、あとの判断がぶれません。ここでは「自分がすでに払っているぶん」を先に数える、という形になります。

会社員として給与から社会保険料が引かれている人は、その時点でいくつかの保障をもう買っています。数える前に足りない前提で話を始めると、同じものを二度買うことになります。逆に言うと、この順番さえ守れば、あとの計算は電卓で終わります。

先に数える対象は、だいたい次の5つです。

  • 遺族基礎年金・遺族厚生年金。厚生年金保険料から出ている、遺された家族への年金
  • 高額療養費制度。ひと月の医療費の自己負担に上限がかかる仕組み
  • 傷病手当金。病気やケガで働けない間の、給与の代わりになる給付
  • 団体信用生命保険。住宅ローンを組むときに入っていれば、残債が保険で消える
  • 勤務先の制度。弔慰金、死亡退職金、団体保険など。就業規則か人事に確認する

この5つを数え終えるまで、外から何かを足すかどうかは決めない。順番だけの話です。

紙の左側に書く「出ていくお金」

ここからは淡々といきます。まず、遺された家族がこれから払うことになるお金を、次の4つに分けて並べます。1枚の紙を縦に2列に割って、左側に書いてください。

  1. 生活費。いまの生活費の全額ではありません。本人が使っていた分が減るので、その減る分を引いた額を、必要な年数ぶん積みます。年数は「末子が独立するまで」と「そのあと配偶者ひとりの期間」に分けて置くと、あとで直しやすくなります
  2. 教育費。進路の想定によって幅が大きいので、幅のまま置きます。決め打ちすると、あとで全部やり直しになります
  3. 住まいのお金。賃貸なら家賃を年数ぶん。持ち家で団体信用生命保険に入っているなら、住宅ローンの残債はここに書きません(右側で消えます)。ただし管理費・修繕積立金・固定資産税は残るので、こちらは書きます
  4. 一時的に出るお金。葬儀や当面の予備費など。金額は地域と方針で大きく変わるので、自分で調べた額を入れます

ここで金額の目安を書かないのは、意地悪ではありません。家賃も教育費も、住んでいる場所と家族構成で桁が変わるので、他人の平均値を入れた瞬間に、その紙は自分の紙ではなくなります。

紙の右側に書く「入ってくるお金」

右側は、公的なものと勤務先のものと、自分の家のものに分かれます。以下の金額はいずれも公式で確認した2026-08-04時点のものですが、制度改正で動きます。実際に計算するときは、最新の公式の記載で確かめてください。

遺族基礎年金(日本年金機構)

18歳になった年度の3月31日までの子(障害等級1級・2級なら20歳未満)がいる配偶者、または子が受け取れます。令和8年度の額は、子のある配偶者が受け取るときで年額847,300円(昭和31年4月1日以前生まれの方は844,900円)。ここに子の加算がつき、1人目と2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円です。

大事なのは金額よりも、子が高校を出る年度で終わるという点です。紙の右側では、年額ではなく「年額×残り年数」で置いてください。

遺族厚生年金(日本年金機構)

会社員がいちばん取りこぼすのがここです。額は亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3で計算されます。そして、厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった場合などは、加入期間が300か月(25年)に満たなくても300か月とみなして計算されます。若いうちに何かあったときほど、この「みなし」が効きます。

さらに、夫を亡くした妻が40歳以上65歳未満で生計を同じくする子がいない場合などには、中高齢の寡婦加算として年額635,500円が加算される仕組みもあります(令和8年度)。自分の場合の額の調べ方は、遺族年金がいくらになるか調べる手順を見るほうに手順で書いてあります。

医療のほうの給付

医療費については、ひと月の自己負担に上限がかかる高額療養費制度があります。この制度は令和8年8月診療分から見直しが入っていて、月ごとの上限額に加えて年単位の上限(年間上限)が新しく設けられました。数字が今年動いた部分なので、医療費の自己負担に上限がかかる仕組みを確かめるほうに区分ごとの表を置いています。

働けない間の収入については、健康保険から傷病手当金が出ます。1日あたりの額は、支給開始日以前12か月の各標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2。期間は支給を開始した日から通算して1年6か月です(全国健康保険協会)。

勤務先と、自分の家のもの

  • 弔慰金・死亡退職金・勤務先の団体保険。就業規則か人事に聞けば分かります
  • 配偶者の就労収入。いまの収入と、働き方を変えた場合の想定と、両方を置く
  • いまある預貯金と、換金できる資産
  • 団体信用生命保険で消える住宅ローンの残債(左側に書かなかったぶん)

4ステップの手順(20分で終わります)

紙とスマホの電卓だけで足ります。

  1. 左側を埋める。生活費・教育費・住まい・一時費用の4項目。年数は「末子が独立するまで」「そのあと」の2区切りで書く
  2. 右側の公的部分を埋める。遺族基礎年金は子の人数と年齢から。遺族厚生年金はねんきん定期便の厚生年金部分を出発点にして、分からなければ年金事務所で確認する。ここは推測で埋めないほうが早いです
  3. 右側の残りを埋める。勤務先の制度は就業規則、預貯金は通帳、住宅ローンは返済予定表。3つとも家にあります
  4. 左の合計から右の合計を引く。マイナスになったら、外から足すものは無いという結論です。プラスになったら、その差額が「検討する範囲」になります

詰まりやすいのはステップ2だけです。ステップ1と3は家の中で完結します。

ここまでが、家族構成にかかわらず全員に共通する手順です。残るのは、自分の勤務先の制度と加入記録を当てはめたときに、その差額が実際いくらになるのかという一点だけになります。そこは記事で断定できる種類のものではないので、自分の家族構成で不足分を確かめる窓口を見るのが早いです。話を聞くところ自体に、こちら側の費用はかかりません。

つまずきやすい点を先に

  • 遺族厚生年金を「ねんきん定期便の数字の4分の3」で済ませてしまう。50歳未満の定期便に載っているのは、これまでの加入実績に応じた額です。300か月みなしが効く場合はここからずれます
  • 住宅ローンを左右の両方に書いてしまう。団体信用生命保険に入っているなら、残債は左側に書きません。二重に数えると、必要な額が実際より大きく出ます
  • 生活費をいまの全額で積んでしまう。本人の分が減ることを織り込まないと、これも大きく出ます
  • 子の年齢を止めて計算してしまう。遺族基礎年金は子が高校を出る年度で終わります。年数を掛けるのを忘れると、逆に小さく出ます

この4つは、どちらかの方向にずれます。だから「一度計算したら終わり」ではなく、家族構成や住まいが変わったときに書き直すもの、と思っておくのがいいです。

この計算が向かない人

  • 独身で、扶養している家族がいない。遺された人の生活費という左側がそもそも立たないので、この計算はほぼ意味を持ちません
  • 自営業・フリーランス。遺族厚生年金も傷病手当金も、会社員とは前提が変わります。同じ紙は使えません
  • いま家計が回っていない。左右の紙より先に、固定費の並べ直しのほうが効きます
  • すでに引き算を済ませて、差額がマイナスだった。これはもう終わっている人です

この4つに当てはまる人は、今回は見送っても損はしません。当てはまらない人、つまり扶養している家族がいる会社員で、差額がプラスに出た人だけ、うちの場合の不足分だけを聞ける場所を見るところへ進めば足ります。全員に必要な作業ではないです。

私がどうしているか

私は住宅を買ったときに団体信用生命保険に入っているので、それとは別に生命保険には入っていません。自動車保険はネットで契約できる安いものにしています。掛け捨て以外の、毎月払い続ける形の保険には入っていません。

これは私の選択の説明であって、おすすめではありません。私の場合はたまたま、左側の大きい部分(住宅ローン)が右側で消える形になっていた、というだけです。ローンを組んでいない人、賃貸の人、子どもの人数が違う人は、同じ紙を書いても別の答えが出ます。合う合わないは条件次第です。

……と書いておいて何ですが、この引き算、面倒くさいのは事実です。私も最初に自分の紙を作ったとき、ねんきん定期便を探すところで1回止まりました。それでも、面倒なのは最初の1回だけで、2回目からは数字を差し替えるだけになります。掛け捨てと貯蓄型のどちらを選ぶかという話も、この紙ができてからのほうが早く決まります。順番の問題は、掛け捨てと貯蓄型を分ける判断軸を確かめるほうに分けて書きました。

いま入っているものが多すぎないかも、同じ紙で分かります

この引き算をすると、足りない額だけでなく、すでに入っているもののうち何が重なっているかも見えます。同じリスクに二重三重で備えている状態は、毎月の支出としてそこそこ効いてくるので、保険に入りすぎかどうかを家計から見分けるほうもあわせて確かめておくと、片付きます。

すでに入っているものを一枚ずつ点検していく作業のほうから始めたい人は、保険の見直しを何から始めるか順番を確かめるほうが入口としては軽いです。計算からでも、点検からでも、たどり着く場所は同じです。

他の選択肢も並べて見たい人へ

保障の話だけでなく、固定費や手取りの側から家計を見直したほうが早い場面もあります。入口をまとめてあるので、家計の見直し先をまとめた入口を見ると、比べる材料が増えます。

この記事を書いている人

しばおと申します。1974年生まれの団塊ジュニアです。人材紹介会社の社長をやっていた側の人間で、自分自身も転職活動を5回、6社を渡り歩いてきました。投資で短期に溶かした失敗も、そこから中長期に切り替えた立て直しも、ひととおりやっています。

私は保険の募集人でも、ファイナンシャルプランナーでもありません。ここに書いたのは特定の商品の話ではなく、公的な制度で確認できる範囲の数字と、紙の並べ方だけです。本文中の制度と金額は、日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、全国健康保険協会「傷病手当金」で2026-08-04に確認しました。金額も上限額も制度改正で動くので、実際の判断の前に、公式の記載で確かめてください。